ビジネス界で活躍されている素敵なPeopleをご紹介しています。
A&Peopleは、そうした素敵な方々と業務を通じて、助力となるべく連携させていただけることを誇りに思っています。

vol.37 服部 武さま

A&People 顧問 上智大学理工学部客員教授

有識者・専門家として、行政の幅広い分野で活躍

既成概念にとらわれない柔軟な思考で、常に最適なアドバイスと斬新な提案をしてくれる服部顧問。その行動と判断の迅速さにはいつも驚かされています。 情報通信の専門家としての幅広い活動、研究者に求められる英語力、仕事以上(?)に勢力的に取り組んでいる趣味などについて聞きました。

「People」第37回目は、A&Peopleの顧問である服部武さまのご紹介です。
既成概念にとらわれない柔軟な思考で、常に最適なアドバイスと斬新な提案をしてくれる服部顧問。その行動と判断の迅速さにはいつも驚かされています。
情報通信の専門家としての幅広い活動、研究者に求められる英語力、仕事以上(?)に勢力的に取り組んでいる趣味などについて聞きました。
                                              [取材者:嶋田 千恵]

NTT勤務を経て、大学教授に

25年近く務めたNTTではどのような業務を?

もともと車が好きで将来は自動車関連の仕事をと考えていたのですが、周囲から「これからは電気・電子の時代」と言われ、電子工学を専攻しました。NTT(当時は日本電信電話公社)の研究所では、車が好きだったので自動車電話の開発部署に入り、自動車電話からPHSに至る通信方式の研究開発を手がけました。
その後は研究所全体の開発計画書を審議する部署で、研究計画を重要性に応じてランキングし、研究費を配分するという仕事をしていました。さまざまな分野の研究計画が集まってくるので、かなり大変な作業でしたが、無線やネットワークの知識を蓄積でき、他部署の人との接点ができたことは大きな財産でした。NTTを辞めた後も、そういうチャンネルが大いに役立っています。 

研究所から大学へ移った理由は?

定年前に辞めるつもりはなかったのですが、研究職も新陳代謝をはかり40代半ばになると子会社か他メーカー、または大学に行くというのが当時のキャリアパスでした。いちばん多いのは子会社でしたが、そこにはかつての上司や同僚がたくさんいる。これまでの自分の知識を活かし、また自分も学ぶ意味で大学へと考えたんです。
大学が欲しいのは若手でしたが、それまでの経験を考慮していただけたようで、採用となりました。65歳で定年を迎えましたが、その後1年間特別規約教授となり、現在は、客員教授として大学に残っています。 

有識者・専門家として、行政の幅広い分野で活躍

官庁の審議会の委員なども務めています。

総務省の情報通信審議会の携帯電話等高度化委員会の委員長を十年近く務めました。専門家として所見を述べるだけでなく、世の中の原理や専門外のチャンネルに触れることができ、私の方も勉強になりました。2011年には、知的財産高等裁判所の専門委員を学会の先輩から引き継ぎました。最近は特許をめぐる争いなど、専門知識が必要となる訴訟が増えています。こうした訴訟で裁判官や当事者に対して、専門家として中立的な立場でコメントをしたり、専門技術について説明を行ったりしています。 

対外活動もかなり忙しいようですが。

その一つが、「マルチメディア推進フォーラム」です。これは、NTTの研究所時代から関わっているもので、月1回開催するフォーラムの準備に加えて、テーマがモバイル関連のときには基調講演も担当しています。30分の講演ですが、テーマが「映像AI解析」「5GNR」「プライベートLTE」といった最新技術なので、その準備は今の私にとっていちばん負荷のかかる作業となっています。そろそろバトンタッチをしたいのですが、後任がなかなか見つからなくて……。
また、若い世代に研究成果を発表できる場を増やすために、こうした国際会議を日本に誘致したり、アジアで学会を結成して、その国際会議を日本、韓国、シンガポール、台湾の持ち回りで開催したりもしています。 

論文ではプレイン・イングリッシュが糸口になる

国際会議や論文など、研究者には英語力が求められますね。

専門用語は限られていますから、発表や質疑応答ではそれほど苦労しませんが、「国際会議を日本で開きたい」という交渉や折衝はさすがにそうはいきません。私たちの世代が中学から学んできた英語では、まったく役に立ちません。
音で言うと、日本語はド・ミ・ソで構成されていて、英語はそこにレ・ファ・ラ・シが加わって、複雑になります。小学校で縦笛など楽器を教えれば、みんなある程度できるようになるように、英語も吸収力の大きい子どものうちにしっかり教育することが重要だと思います。
最近の若手研究者は、英語で発表する方はうまくこなすのですが、質問になると黙ってしまう人が多いんです。質問が分からないのか、答えが分からないのかと、こちらも助け船を出さざるを得ません。英語の読み書きは習っていても、質疑応答、いわゆるディベートの訓練を受けていないからでしょうね。A&Peopleでぜひ、社会人向けにヒアリングやディベートの訓練をする機会を提供してもらえたらと思います。
また、ドクターでも留学する人が減って、日本のモノトーンな環境しか知らない人が増えているのも気掛かりです。「人間は環境の動物」ですから。どれだけ机の上で英語の勉強に時間を費やしても、実際に外国人に囲まれて話す、聞くという経験を積まないと、そういう場にいるだけで圧倒されてしまうし、英語を使えるようにはならないでしょう。 

プレイン・イングリッシュは論文にも役立つでしょうか。

内容が優れている論文でも、英語の面で問題が多いと、審査を通りません。大切なのは、「どう(how)」伝えるかではなく、「何(what)」を伝えるかですから、気の利いた表現である必要はなく、あくまでも平易な英語でいいのです。ただし、日本語と英語は構造がまったく違いますから、日本語の文章を英語に置き換えるのでは、主語が抜けたり、必要以上に長くなったりと不自然になってしまいがちです。最初から英語で、それもプレイン・イングリッシュのようにシンプルな文法、表現で考えて書く。英語で論文を書くのが苦手なら、まずはそこから始めるのがいいかもしれません。 

ゴルフ、日曜大工とピアノ演奏も玄人はだし?!

休日にはどのようにリフレッシュを?

体を動かすのが好きで、飛ばすことだけは自信のあるゴルフを楽しんでいます。(※謙遜されていますが、ゴルフはとてもお上手です。)それと、家の椅子や扉を修理したり、庭に藤棚や遊びに来るネコの小屋を作ったりと、暇があれば日曜大工にもいそしんでいます。物事を深く考えずにできるので、気分転換になるんです。若い頃からやっているので道具類もかなり揃っていて、ゴルフのクラブも「こうしたらもっと飛ぶのでは」と思い付いたら、自分で長さを調整したり、グリップを交換したりしています。
実は今、いちばん打ち込んでいるのはピアノ。高校生の頃に独学で弾き始めて、しばらく弾いていなかったのですが、タッチはピアノのままで音をヘッドフォンで聞けるサイレントピアノに出合って、20年ぶりに再開しました。弾き出すと2時間くらいはあっという間に経ってしまい、とくに夜は時計を見ながらにしないと、睡眠不足になりかねません(笑)。曲を弾くこと自体も楽しいけれど、「この早いパッセージは小指を押さえるようにするとうまくいく」など、自分で上手く弾くコツを考え出すのが面白いんです。