また、内田教授の講義で休講はほぼゼロでした。ご自身がどんなにお忙しくとも、たとえヨーロッパ出張中でも講義のためにわざわざ帰国し、またヨーロッパへとんぼ返りするという強硬なスケジュールを組んでも講義に穴をあけることはありませんでした。
教授いわく、「ビジネスマンとして当たり前のことでしょ?」とさらっと答えられました。
それを本業にしている大学の専任教授ですら何らかの理由で2割ほどを休講にする中で、仕事に対する真摯な姿勢に改めて敬服しました。
BCGでもあと10年は続けられたけれど、自分がプレーヤーとしてやっていくだけでなく、そういう人を育てる側に回ろうと考えたんです。これまで出会った500人を超える経営者から見聞きし、学んだ『リーダーシップ』を教えてあげたい、次世代のリーダーを育成したいと。経験豊富なビジネスパーソンと話しをするのも楽しいけれど、ビジネス経験の少ない学生と付き合うのもおもしろいんです。
ビジネススクールの学生は大半が二十、三十代、つまり10、20年後のビジネスリーダーです。彼らが活躍するまで私が元気でいるかどうか心配です(笑)。これからは現役の四十、五十代のビジネスリーダー(役員・経営者)の育成やサポートにも力を入れていきたいと思っています。
学生を送り出してぽっかり穴が開いても(インタビューの前日に12名のゼミ生を送り出して“若干センチ”とのことでした)、すぐにほぼ同数の新入生を迎えられ、どう鍛えようか考えるだけで楽しいとおっしゃる内田教授にとって、教師もコンサルティング業に負けず劣らずの天職のようです。
最後に、今の若者に伝えたいメッセージをおうかがいしました。
よく就職活動をしている学生から『いい会社を教えてください』と聞かれますが、そういう質問には答えません。『自分がいったい何をしたいのか、何をさせてもらえるのかを踏まえたうえでその会社がよいかどうかを教えてください』という質問なら喜んで受けます。一人ひとり、やりたいことも、将来の夢も違うはずです。したがって、一般論としての良い会社という発想から脱却し、自分の人生を自分で決定するマインドを持ってほしいですね。先に企業ありきで自分の人生をゆだねていいのか。企業も同じことです。国の政策にゆだねていいのか?そろそろそうした考えから脱却しなくては、個も、企業や国とともに衰退してしまう。まず個が力を付け、充実することが企業の原動力となり、企業も伸び、企業が伸びれば結果として国も元気になると考えてもらいたい。高度成長期のような誰もが同じパターンで前へ向かい成長する時代は終わって、今は多様性の時代。海外へ出ていって活躍してもいいし、田舎で野菜作りをしてもいい。大切なのは、世間の評価や業績ではなく、自分をどうポジショニングするかが重要なのです。