業界内にとどまらず、業界外でも中村様のお名前をご存じの方は多いと思います。日本のIT改革に関する中村様の様々な活動や提言は、各方面から注目されています。また、そのフランクで真っ直ぐなお人柄で、仕事でもプライベートでも、多くの”彰二朗ファン”を獲得されています。
中村様は、毎日たいへんお忙しい日々を送られているのに、いつお目にかかっても、余裕と包容力のような安堵感を感じさせてくれます。アグレッシブではなく、いつでも前向きで、そして実に楽しそう…。その秘訣は、一体なんなのか、前々からとても不思議で、その活力の源はどこにあるのかがとても興味がありました。
ある日、中村様のブログに、「毎日に意義を感じ、そのプロセスに意味づけすることの大切さ」が書かれており、それを読んだ私は、強い感銘を受けました。中村様が意義を感じる日々の仕事とは、どんなものなのでしょう。
日本のIT投資額は、アメリカに次いで世界第2位です。しかし、電子政府化の世界ランキング は低く、18位にとどまっています。そんな、日本のITのありかたを改革していかなければいけないと考えています。
サンには、創業から『The Network is The Computer~あらゆる人、あらゆるものをネットワークでつなぐ』、という社是があり、私たちが目指している真のネットワーク社会が現実のものになれば、例えばもともと軍事目的に開発されたインターネットが戦いのためではなく、医療連携による人命救助など、人を救うことをも可能になるわけです。教育格差の解消や、在宅型のワーススタイルの定着にもつながるでしょう。それにITによる環境負荷も……あ、実際にみてもらった方が早いか…
中村様は、スマートに“すっと”立ち上がると、会議室に置いてある端末「Sun-Ray」を立ち上げてデモンストレーションを開始してくれました。Sun-Rayは、ハードディスクもCPUもないシンプルな端末なので「立ちあげる」というより、テレビやラジオのスイッチのように「つける」と言った方がふさわしいのかもしれません。瞬時にそれまで中村さんがデスクで作業されていたOpen Officeの画面が出てきました。
僕が、自分のIDカードを差し込むと、会議室でも、米国の本社でもどこのSun-Rayからでも自分のデスクトップを呼び出すことができます。便利でしょ!San-Rayは、わずか4wで動くので、個々のパソコンが消費する電力を大幅に削減できますし、CPUがないので熱も発しませんから、室内温度も上昇させません。また、機械の更新もほぼ必要がないため、廃棄物も少なくなる。サンでは、これを活用して、在宅で仕事をする人間が増えていますが、こうしたネットワークの普及により、人の移動によるCO2の発生も抑えられます。
なるほど。知識として知っていたシンクライアントですが、こうして目の当たりにすると、その効率性や地球へのやさしさがよく理解できます。
中村様のお話によれば、世界のインターネット人口は現在約12億人、毎日20万人のペースで増加し、今後45億人まで展開する見込み。その電力を賄うには、30個の原子力発電所が必要になるという試算も出ているのだそうです。ITによる環境負荷を極力軽減させることは、サンのビジョンである「あらゆる人とものをつなぐ」を達成するために、切っても切り離せないことであるわけですが、「企業の利益と成長のため」という理論ばかりが先に立ち、「社会のため」になすべきことが軽視されたり、度外視されている現在、中村様のお話からは「社会のためにITがなせること」というゆるぎない理念や信念が強く伝わってきます。当たり前のことがなかなか現実の世界では形になっておらず、国民のためにも、それを切り崩そうと戦われている姿が、その笑顔の裏にあることが想像され、熱い思いが伝わりました。そして、その壮大なプロジェクトの達成を、中村様がご自身の使命としておられることが「日々の意義」につながっているのだと強く感じました。