vol.26 内藤 俊行さま
三井造船株式会社 財務経理部IR室 課長補佐
世紀にわたる造船の技術を活かして、4つの領域で事業を展開
経理とIRを並行して手がけられている内藤さまに、来年創業百周年を迎えられる三井造船さまの今後のビジョン、内藤さまのワークライフバランスを保つための時間管理術などについてうかがいました。
「People」第26回目は、三井造船株式会社 財務経理部IR室の内藤俊行さまのご紹介です。A&Peopleでは、コーポレートレポートやリリースの英訳をお手伝いさせていただいています。
経理とIRを並行して手がけられている内藤さまに、来年創業百周年を迎えられる三井造船さまの今後のビジョン、内藤さまのワークライフバランスを保つための時間管理術などについてうかがいました。
[取材者:伊藤 祐子]
世紀にわたる造船の技術を活かして、4つの領域で事業を展開
メインビジネスはやはり「造船」でしょうか。
まさにそれが世間のわが社へのイメージで、IRでもよく聞かれる点です。確かに、1917年に造船会社として創業し、今も造船関連の技術が強みになっていますが、実は連結売上8,000億円のうち新造船によるものは1,000~1,500億円で、売上自体はそれ以外のビジネスの方が大きいです。
造船以外にはどのようなビジネスを展開されているのでしょうか。
現在は、「造船」「海洋」「機械」「エンジニアリング」と4つの事業領域で展開しています。いずれも、船づくりで培った高度な技術が、陸へと上がって多彩な事業が広がりました。「海洋」のコアビジネスとなっているのは、海に浮かぶ船のようなプラントで、海底油田の生産システムであるFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)です。これは子会社の三井海洋開発が製造・販売を手がけています。「機械」では、ディーゼルエンジン、港湾で使用されるコンテナクレーン、各種産業用機械の製造とメンテナンスを、「エンジニアリング」では、石油化学プラントや火力発電所、最近ではバイオマスプラントなどの設計からメンテナンスまでを総合的に請け負っています。
創業百周年を目前に打ち出された2025年ビジョン
目指すはバランスのとれた事業ポートフォリオ
来年創業百周年を迎えるにあたって、長期ビジョン「MES Group 2025 Vision」を打ち出されました。 そのポイントは何でしょうか。
先ほど4つの事業領域を挙げましたが、「2025 Vision」ではそのカテゴライズとは別に、社会のニーズと三井造船グループの強みやリソースとが重なる部分に注目しています。そこで注力すべき領域とされたのが「環境・エネルギー」「海上物流・輸送」「社会・産業インフラ」です。
その根底にあるのは、社会(=地球)の持続可能な未来、そして三井造船グループの持続可能な未来です。造船マーケットや海運マーケットは世界の大きな波にさらされ、事業もそれに大きく左右されてきました。シクリカルな(景気の循環に大きく左右される)部分を少なくし、バランスのとれた事業ポートフォリオにしていくことで、利益率の向上と安定化を目指していきます。
事業ポートフォリオの変革について、具体的に教えていただけますか。
まず、新造船をメインとする製造ビジネスでは、規模を拡大するのではなく、生産体制の構築などより付加価値の高いものに集約し、競争力を高めていきます。受注が多ければ海外で建造させ、市場が縮小したら自社内だけにする、そういう調整ができる体制をつくるということです。
機械とエンジニアリングでは、これまで中心だったEPC(設計・調達・建設)や売り切りだけでなく、メンテナンスやサービス、事業投資などそれ以外の部分にも手を伸ばし、製品のライフタイムに広く長く関われるビジネスを増やして、安定的な基盤をつくっていきます。
経理をメインにIRも担当
常に高い仕事の山を定時帰宅で乗り切るコツとは?
内藤さまはIRをご担当されていますが、メイン業務は財務・経理なのですね。
ええ、本業は財務・経理の方で、連結決算を担当しています。連結子会社から収集した資料に必要な調整をして、決算短信や有価証券報告などの開示資料を作成するのがメインの仕事です。それと並行してIRも担当していて、投資家さまの取材対応、年2回の決算説明会の開催、日本でのコンファレンスに加えてロンドン、ニューヨーク、香港での海外IRの実施などを担当しています。
経理の方は、一番大きな仕事の山が決算時期に来ます。その山が下がってきたと思ったら、今度はIRの山が上がってきて、常に山が高い状況ですね。
IR業務の苦労、やり甲斐をどういう所に感じられますか。
当社を見ていただいている投資家さんは業界歴が長くて、何にでも詳しいので、それに対応していくには、知識を広げ、深めていく、そういう努力が求められます。また、造船というイメージが強く、質問の中心がどうしても船になってしまう。それ以外のビジネスをわかりやすく、より魅力的に伝えなければならない、これも努力を要する部分です。
IRを担当して9年目になりますが、造船にはマーケットも含めてかなりのアップダウンがありました。一時的に取材の途絶えた投資家さんが、「また教えてください」と戻ってきてくださる。出入りが激しい金融の世界にあって、社外の方とそういうつながりが一定レベルで持続できるのは、長く携わってきたからこそだと感じています。
内藤さまは、ご家庭も大切にされていて、なるべく定時で帰宅されるそうですね。仕事を効率的に進めるコツがありましたら、ぜひ教えてください。
自分で必要以上に抱え込まない、抱え込む時間を長くしないようにしています。不完全なままで次に渡すということではなく、期限ギリギリまで抱え込まずに、なるべく早めに次の工程に回せば、結果的には周囲にも自分にも余裕ができます。逆に、自分の前の工程が押しているときは、それを待って遅い時間まで残るのではなく、「明日巻き返そう」と割り切って帰ることもあります。
常に仕事の山が高い中で、どのようにリフレッシュされていらっしゃいますか。
子どもの相手をすることですね。5歳の息子がいるのですが、幼稚園は四季の行事が多く、子どもと過ごすことで、独身時代、夫婦二人時代には感じなかった四季の変化を感じるようになりました。実は虫が苦手だったのですが、虫取りに付き合ううちに触れるようになったし、20年振りに逆上がりをしたり、縄跳びで二重跳びをしたりと、逆にこちらの体力と忍耐力が鍛えられています。あとは料理が趣味で、餃子は皮から、ピザは生地から作ります。
ただ、子どものペースに合わせると、イライラすることもあります。本人の前では手出し、口出しはしないようにして、息子が寝た後にお酒を飲んで、テレビが“砂嵐”になる頃までただボーッとする至福の時間を過ごして、それを解消しています。
誰が読むのか、何に向けた資料なのかを考える
A&Peopleのそうした姿勢には、とても共感を覚えます
内藤さまとは、弊社の「IR実務英語セミナー」に参加していただいて以来のご縁です。
中学・高校生にもわかるレベルで、専門用語を多用しない「Plain English」についてのセミナーでしたね。当時は、開示義務のない資料を「一応」英語版にしておこうと社内で英訳していました。堅苦しくて、一文がかなり長いのを、その通り忠実に。セミナーで、誰が読むのか、何に向けた資料なのかを考えることが大切だと教わり、その考え方にとても共感を覚えました。私自身は、高校・大学時代をアメリカで過ごし、逆に「簡単な英語」では見下されると思い込んでいたので、とても新鮮でした。
最後に、A&Peopleへのご意見・ご要望などがありましたらお願いします。
英語に通じているというだけでなく、成果物が目的に合ったものになるように配慮されているのは、さすがプロだと思います。先日、翻訳をお願いしたときも、見積もりをさっと出され、それ以降の質問にもかなり丁寧に答えていただけて、改めて「きちんとしている会社だな」と感じました。英文の開示資料も重要視されてきているので、これまで社内で作成していたものの校正の必要が出てきたら、ぜひお願いしたいと思います。
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