東証プライム上場企業の英文開示義務化 いよいよ4月から開始
~効率的な進行管理のポイント~

前回「質の高い英文開示実現のための翻訳会社選定のコツ」として、以下の5つのポイントをご紹介しました。

  • 金融・IR分野の専門知識
  • IR翻訳の実績
  • 品質管理体制
  • 明確なコミュニケーション
  • 効率的な進行管理

今回はこれらの中から「効率的な進行管理」の部分に焦点をあて、同時開示に向けたスケジュール管理や翻訳の進め方について、ポイントをご紹介します。

翻訳会社への入稿タイミングはいつがベスト?

開示日直前に翻訳を開始して、スピードを重視するあまり、翻訳の品質については後回しになってしまっていませんか。
それではせっかく同時開示しても、海外の投資家に興味をもってもらえなかった、なんてことにもなりかねません。
スピードを重視しつつも、品質を保つためにはどの程度の日数が必要なのか、翻訳会社と分量や希望納期のすり合わせを行い、前もって計画することが大切です。
弊社では、遅くとも入稿予定時期の約1か月前までにスケジュール調整を行うことをお勧めしております。

品質重視?スピード重視?

企業によって重視するポイントはそれぞれです。

品質を重視する場合、ある程度の時間を翻訳に確保する必要が出てきますので、早い段階での翻訳開始が必要となります。数字をブランクにした状態での入稿や、章ごとなどで分割し、日本語が完成した部分から翻訳を開始する等の工夫を施すのがお勧めです。

スピードを重視する場合に気をつけたい点は事前のスケジュール設定と設定したスケジュールの順守です。予めスケジュールをきちんと決めておくことで可能な限りの効率化を図ります。そのほかには、社内で対応する部分と翻訳会社へ依頼する部分とを分けて、翻訳が必要な部分のボリュームを減らし、スピードアップを図るというのも方法の1つです。

決め手は和文作成のタイミング?

「日英同時開示」と聞くと翻訳の期間を短縮することばかりに目を向けてしまう方が多いのですが、和文作成のスケジュールについてはいかがでしょうか。
翻訳期間を短縮する工夫ももちろん必要ですが、スピードを重視しすぎると、翻訳した文章の品質面がおろそかになる可能性もあります。
和文制作と英文制作の部署が異なる場合など、難しい部分も多いかとは思いますが、ぜひこの機会に和文制作タイミングや翻訳開始タイミング、全体のスケジュールについて、社内で情報共有の機会を設けてみてはいかがでしょうか。

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東証プライム上場企業の英文開示義務化、
いよいよ2025年4月から開始

2025年4月から東京証券取引所のプライム市場上場企業に対する英文開示の義務化が始まります。
義務化に合わせ、今まで行っていなかった英文開示を始める企業も多く、現在弊社にもお問い合わせを数多くいただいております。

義務化に伴い、まずは開示する体制を整えることが重要ですが、単に義務を果たすだけでなく、この機会を活用して明確な目的を持って情報開示を行うことが重要です。

英文開示義務化をビジネスチャンスに

東証が英文開示義務化を決定した主な理由は、日本市場の国際競争力を高めるためです。
英文で開示することにより、

  • 海外投資家が日本企業を理解し、投資判断を行いやすくなる。
  • 日本語と英語の同時開示により、国内外の情報格差を減少させ、公平性を高める。
  • 透明性の高い開示は、優れたコーポレートガバナンスの証となり、信頼性向上につながる。

といったメリットが生まれ、日本企業は新たな海外投資家の獲得や、国際競争力を高めることができます。

質の高い英文開示実現のための翻訳会社選定のコツ

今回の英文開示義務化は、多くの企業にとって課題となる一方で、適切に対応することでビジネスチャンスにもなり得ます。質の高い英文開示を実現するためには、適切な翻訳会社の選択が重要です。以下に、翻訳会社を選ぶ際のコツをご紹介します。

金融・IR分野の専門知識
IR翻訳は単なる言語能力だけでなく、金融の専門知識が不可欠です。IRに関連した分野の専門知識を持つ翻訳者がいることを確認しましょう。

IR翻訳の実績
過去のIR翻訳の実績や経験値を確認することが重要です。特に、英文開示に関する豊富な経験を持つ会社を選びましょう。

品質管理体制
どのような体制で翻訳が行われているか必ず確認しましょう。特に、費用が安いと非ネイティブによる翻訳や、機械翻訳での対応の可能性があります。欧米ネイティブによる翻訳か、チェッカーによる校閲体制も含まれているか確認することが重要です。

明確なコミュニケーション
意外と見落としがちですが、重要なのが、窓口の担当者との円滑なコミュニケーションです。見積から納品まで、各プロセスでしっかりとしたコミュニケーションを図れる会社を選びましょう。要件を明確化し、進捗共有が円滑に行えることでストレスなくスムーズな英語化を進められます。

効率的な進行管理
事前に明確なスケジュール作成を行い、締め切りを厳守し、効率的なプロジェクト管理ができる会社を選ぶことで、スムーズな英文開示が可能になります。

高品質な英文IR資料は海外投資家からの評価向上につながり、企業価値の向上に寄与します。また、グローバル市場での競争力の強化にもつながるため、長期的な視点で翻訳パートナーを選ぶことが重要です。
まずはお気軽にご相談ください。

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トランスクリエーション

「トランスクリエーション」という言葉を皆さんはご存じでしょうか?
多くの方にはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、「トランスクリエーション」は現在、広告やマーケティングなどの分野で注目されている翻訳の手法です。
本日はそんな「トランスクリエーション」について学んでいきましょう。

「翻訳」+「創造」?

トランスクリエーション(transcreation)とは、「翻訳(translation)」と「創造(creation)」を組み合わせた造語です。
トランスクリエーションは簡単に言うと、「意訳して、訳文に訴求力やインパクトを持たせる」ことを意味します。
しかし、「意訳して、訳文に訴求力やインパクトを持たせる」と言われてもピンとこないかもしれません。
「トランスクリエーション」を理解するうえでは、トランスクリエーションの実例をみてみるとよいでしょう。

洋画のタイトルにみる――トランスクリエーションの実例――

映画のタイトルでは、トランスクリエーションの技術が使われています。
例として、「アナと雪の女王」の原題を上げてみましょう。
「アナと雪の女王」の原題は「Frozen」。日本語にすると「寒さで凍った、氷結した」などの意味となり、日本の子どもたちにとっては寒々しいイメージしか浮かび上がらないかもしれません。
しかし、こちらの原題「Frozen」を「アナと雪の女王」へと「トランスクリエーション」することで、ディズニー作品らしいファンタジックなイメージを持つ邦題に変わりました。

トランスクリエーションの活用

今回はトランスクリエーションの例として、外国映画の魅力的な邦題を紹介しました。
日本の作品でも、スタジオ・ジブリの名作「千と千尋の神隠し」があります。
こちらの英語版タイトルは「spirited away」で、「神隠し」を意味します。
邦題に比べるとびっくりするくらいに短く、シンプルになっていますね。

アカデミー賞などで、日本映画が候補に挙がった時などに海外に向けて英訳されたタイトルをチェックしてみると、新しい発見があるかもしれません!

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