英文開示、何から取り組むべき ?

東京証券取引所は、「プライム市場」の上場企業には、2025年3月の上場維持基準に関する経過措置の終了にあわせて、更なる海外投資家の投資を呼び込み、対話を通じた企業価値向上を促していく観点からその基盤となる情報の英文開示を義務化する方針(さらに日本語と英語の同時開示義務化についても検討中) を公表しています
今後ますます企業の英文開示は求められていくこととなりますが、今回は海外投資家が求める情報についてご紹介いたします。

プライム市場での英文開示実施率

実施率全範囲英文開示抜粋、一部英文開示
決算短信89.3%45%44.3%
招集通知(通知本文、参考書類)87.6%54%33.6%
決算説明会資料67.3%58.7%8.6%
適時開示資料47.6%25%22.6%
有価証券報告書21.2%6.4%6.5%

出典:プライム市場 英文開示義務化に 向けた実態調査集計レポート (2023年8月末時点)/株式会社東京証券取引所 上場部
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/survey-reports/nlsgeu000005qpys-att/jr4eth00000040cg.pdf

海外投資家が求める情報とは

前述にてお伝えした2025年3月を目途とした英文開示義務化では、決算短信、決算説明会資料、有価証券報告書、適時開示を優先的に義務化していくことが検討されています。 これらの情報は、海外投資家からのニーズが特に高いためです。
適時開示はマーケットを動かす重要な情報を含み、英文開示はもちろん最もタイムリーな開示が求められています。
有価証券報告書は情報量が多く英文開示のハードルが高い資料ですが、銘柄を広く調査する目的、またForm 10-K(米国証券取引委員会(SEC)に提出される年次報告書、米国版有価証券報告書とも言える。)に慣れ親しんでおりそれに相当する本資料をよく目に通すという声もあります。MD&Aなど経営者視点による分析、検討内容がある有価証券報告書は海外投資家にとって有用な情報です。
プライム市場での開示率が低い傾向の適時開示、有価証券報告書については上記の通り、開示することで多くの海外投資家を引き付けることができるでしょう。

また、有価証券報告書については2023年3月期決算企業から企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正によりサステナビリティ情報、女性活躍推進法に基づく女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間賃金格差といった多様性の指標に関する開示が求められることになりました
決算短信、決算説明会資料では語られない重要な情報として、有価証券報告書の中でもこれらの項目から英文開示を始めていくことなど開示義務化に向け、様々な側面から検討してみてはいかがでしょうか。