株主総会における株主エンゲージメントのトレンド

参加方法の多様化

コロナ渦で一気に浸透したバーチャル株主総会ですが、パンデミックも終焉を迎え、対面での株主総会も復活しました。2024年の株主総会は、対面とハイブリッド(対面とオンラインの両方で参加できる形式)が混在し、完全オンラインの会議数はわずかでした。

専門家やステークホルダーは、ハイブリッド形式での株主総会を歓迎しています。対面のみでは、参加できる人が限定されてしまい、オンラインのみでは、企業が都合の悪い質問を避けたり、議論を打ち切ったりすることが容易になってしまう可能性が懸念されているからです。

定着しつつあるハイブリッド形式

対面とオンラインの両方で参加できるハイブリッド形式は、より多くの人が簡単に参加できます。そのため、株主や投資会社に好まれています。しかし、ハイブリッド形式を実現するためには、費用、技術的な問題、また、総会のスムーズな進行や運営に影響を与える可能性など、企業側には解決するべき懸念点があります。参加、投票、質問ができるようなインタラクティブなオンライン株主総会には多くの費用がかかります。

良いところ取りの「対面 + オンライン」

オーストラリアでは、完全なハイブリットには移行せず、株主総会自体は対面で行いつつ、オンラインからライブでの質問も受け付ける形も浸透してきています。対面株主総会の利点を生かし、より多くの人が参加できる機会を提供してバランスを取ろうとする試みです。
対面で参加した株主のみが正式な参加者としてカウントされるため、技術的な問題が総会の有効性に影響を与えたり、中止や延期が必要になったりする可能性が低くなります。そのため、ある程度ハイブリッドの懸念点を払拭することができます。

インターネットでの情報提供

株主総会の招集案内は封書やメールで送付されますが、オンラインにも公開されます。また、ビデオ配信や、会議の詳細に関する最新情報やリマインダーの提供などを行うことにより、対面で株主総会に参加できない株主も情報を得ることができます。

株主総会は、年に一度の形式的な集まりから、株主と企業がコミュニケーションをとる場として変化を遂げています。株主が積極的に参加し、意見を述べることができる場とするための努力が一層求められています。

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視覚とストーリーのバランスをとったIR資料作成

プレイン・イングリッシュを使った資料のデザインには、
チャートやグラフ、表を使うことをお勧めしています。
視覚に訴えることで、情報の概要を分かりやすく伝えることができます。

これにより、過剰な情報が世の中に溢れていることに疲れている
読者の目と心を惹きつけることができ、重要なデータを読者に訴え、
アクションを生み出すことができます。

あらゆる資料の目的は、読者のアクションを引き出すことにあります。

データだけ掲載すると、ストーリーが伝わらない場合もあります。
過去5年の売上トレンドの資料を作る際に、特に通常と異なる傾向や
取引が存在しない場合は、視覚に訴えるデータだけの掲載で問題ありません。

しかし、買収や売却、売上に影響を与える会計規則の変更などが
あった場合は、データにストーリーを結びつけることが非常に
大切になります。

最近浸透してきている取締役会スキルマトリックス*でも同様です。
高いレベルでの経営が行われ、業績が高く、取締役会が比較的
安定している場合、ストーリーは説明する必要はあまりありません。

しかし、課題や、スキャンダル、業績の低迷、取締役会の変動などが
あった場合、関連するストーリーを伝えることの重要性が大きく上がります。

取締役会以外の場所においても、当てはまる例は多くあります。

たとえば、台風などの自然災害の避難計画を見てみましょう。
このような場合、ダイアグラムは非常に有効です。しかし、台風や地震などに
慣れていない外国人を対象として情報を提供する場合、
ストーリーつまり背景に関する説明が必要になります。

ダイアグラムに説明を付けることで、日本の災害に慣れている外国人は
ダイアグラムから情報を得ることができ、慣れていない外国人は
説明をしっかり読んで情報を得ることができます。

また、飛行機での安全情報にも同じことが当てはまります。
初めて飛行機に乗る人は、細かいインストラクションを読まないと
安心することができないでしょう。

しかし、頻繁に飛行機を利用する乗客の場合、自分の座席から
非常口への行き方などその機体に特定の情報を動画で提供することが
有効かもしれません。

視覚とストーリーをバランスよく使用するためにあたって、
次の点に注意する必要があります。
1.詳しい説明を必要とする状況を考慮する
2.さまざまな読者が存在し、それぞれの知識レベルや
コンテクストへの親しみ度によってニーズが異なることを意識する
3.読者にどのようなアクションを取ってほしいのか
(使用しているビジュアルはアクションに結びつくか?)

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◆ 参考・出典一覧
*https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/33185/000130817917000063/lefx2017_def14a.htm#lefxa004 (page 16)