伝わる社長メッセージとは

来期に向けて統合報告書やアニュアルレポートのご準備を進められている方も多いのではないでしょうか。今回はこうした報告書の社長メッセージページの見せ方のコツについてご紹介いたします。

■冒頭のご挨拶は短めにしましょう。
社長メッセージの冒頭で、日頃の感謝の気持ちやご支援をお願いするご挨拶文が、長々と綴られていませんか。日本語では丁寧な表現であっても、英語の場合は回りくどいなど、別の印象を与えてしまう可能性があります。株主が一番注目している冒頭だからこそ、ご挨拶は手短にして、重要な企業メッセージを伝えるために使うことをお勧めいたします。

■お写真によって、メッセージの伝わり方が変ります。
海外企業の社長メッセージページでは、笑顔で、自信に溢れたお写真が多く活用されています。株主に対して、自信やエネルギッシュな姿勢、またフレンドリーな企業イメージをアピールしています。ぜひ社長メッセージページで伝えたい内容に沿ったお写真を採用してみてください。

■メッセージは平易な英語で伝えましょう。
米国証券取引員会(SEC)が推奨している『プレイン イングリッシュ ハンドブック』の序文で、ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハザウェイのアニュアルレポートを執筆するときは、自分の姉妹に話しているつもりで平易な英語で書いていると述べています。
社長メッセージでは、伝えたい情報を整理した上で、読みやすい、プレイン・イングリッシュを意識してみてください。きっと、個々に響く企業メッセージを伝えることができるでしょう。

いかがでしたでしょうか。
ちょっとした工夫で社長メッセージページの印象は大きく異なり、また企業イメージをよりダイレクトに伝えていくことができます。

弊社では統合報告書やアニュアルレポート、サスティナビリティレポート等の翻訳から制作まで承っています。ぜひお気軽にご相談ください。

バフェット氏の執筆時の心掛け

皆さまは投資の神様と呼ばれているウォーレン・バフェット氏を
ご存知だと思います。彼は世界最大の投資持株会社である
バークシャー・ハサウェイの筆頭株主です。
また毎年開催される同社の株主総会では彼の話を
聞くために世界中から数万人にものぼる株主が参加しています。
そのような会社のアニュアルレポートはどのようなものでしょうか。

彼は自分の会社のアニュアルレポートを書くときは、
投資家そのものというよりも、自分のお姉さんや妹に
話をするようなイメージで執筆するそうです。
もちろん、バフェット氏のお姉さんたちも知的な
方だとは思いますが、会計や金融の専門家ではありません。
プレイン・イングリッシュは理解できても、専門用語には
まごつくでしょう。

また、バフェット氏はこう述べています。
「自分が投資家として読み手の立場だったら知りたいと思う情報を
提供する。それが私の目指すところです。よい文章を書くためには
シェイクスピアである必要はありませんが、情報を与えたいと心から
思っていなくてはなりません。」

誰かを感動させたり、うならせたりするためではなく、
情報の提供ということを常に心に留めて文章を書くことが大切です。
ちなみにバフェット氏の2017年のアニュアルレポートの一部の英語の
読みやすさを計測したところ高校3年生が読んで理解できる
レベルでした。ぜひ一度読んでみてください。

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◆ 参考・出典

  1. 金融財務編 Plain English Handbook:SEC
  2. 法律編 Richard C. Wydick, Plain English for Lawyers,
      66 Cal. L. Rev. 727 (1978)

KISSの原則:複雑なシステムVSシンプルなシステム 優れたパフォーマンスを発揮するのはどちら?

KISSの原則は、1960年代に戦闘機を設計した際の教訓として生まれ、
エンジニアリングと設計の原則として認識されるようになりました。
現在では、ソフトウェア開発や教育の分野などさまざまな分野で活用
されています。プレイン・イングリッシュやIRコミュニケーションの
分野も例外ではありません。

KISSは「Keep it Simple Stupid:愚かなほどシンプルにしなさい」
の頭文字をとったもので、1960年、ロッキード社*のチーフエンジニアの
ケリー・ジョンソンが口にしたのが始まりとされています。

ジョンソンはチームメンバーに対し、何を設計するにしても
「戦場の兵士」が修理できることが大切だと説きました。
戦闘機が使用される前線では、基本的なメカニック知識とシンプルな
工具しか使えません。

シンプルで簡単に理解できる製品でなければ、戦場ではあっという間
に使えなくなり、役立たなくなるのです。

IRコミュニケーションの分野でも同じことが言えます。
「製品」(ここでは決算報告書、メモ、プレスリリースなど)が、
シンプルで誰にでも簡単に理解できるものでなければ、
ビジネスの現場(意思決定、投資、作業指示、従業員トレーニングなど)
で使用されず、役立ちません。

KISSとプレイン・イングリッシュに対するよくある誤解を解くために、
最後のS(Stupid:愚か)に当たる部分について少し説明しましょう。
Stupidは実際にStupidを意味しているわけではありません。
実際に意味することをより明確に表現するために、
KISSを「Keep it Simple and Straightforward:シンプルで
わかりやすく」あるいは「Keep it Short and Simple:
短くシンプルに」と表現する場合もあります。

プレイン・イングリッシュは、読者を下に見たコミュニケーション
であると誤解されることが多くあります。しかし、プレインであることも
シンプルであることも、Stupidであることとはまったく関係ありません。
Stupidなのは、戦場で修理できない戦闘機や、誰にも読まれない
IR資料です。シンプルな設計はレベルが低いと誤解されてしまうことが
ありますが、実際は高度な技術の象徴なのです。

KISSの原則を使って戦闘機の製品設計を行うことと、
プレイン・イングリッシュを使った文書の作成は同じです。
プレイン・イングリッシュの原則に従って文を書き文書を構成する
ことが高度な技術であることを理解していないと、
プレイン・イングリッシュがレベルの低い読者に向けたものである
ように感じてしまうのです。

来月は、さらに深く掘り下げ、プレイン・イングリッシュを使った
コミュニケーションによる価値創造について説明します。


*現在の米国の航空機・宇宙船開発製造会社である
ロッキード・マーティン社