よりわかりやすい世界共通語、プレインイングリッシュ
豪観光セクターでも注目

プレインイングリッシュ先進国であるオーストラリアでは、ビジネスにとどまらず、行政、病院、ツーリズムなど、あらゆる場面でプレインイングリッシュが活用されています。誰しもが情報を簡単に理解できるプレインイングリッシュは、国内外の観光需要を見込むセクターでも注目されています。
今回はオーストラリアの地方行政が観光需要を見込むビジネスに向けたプレインランゲージの基本についての記事を紹介します。プレインイングリッシュの基本を振り返っていきましょう。
日本国内でも観光需要を狙ったビジネスがプレインイングリッシュやプレンジャパニーズを使っているかどうか、ウェブサイトやソーシャルメディアをチェックしてみると面白いかもしれません。

プレインイングリッシュで大切な言葉の使い方7選

  • 不要な単語は使わない
  • シンプルな単語やフレーズを使う
  • YouやMeなどを使い、親近感が感じられる形式をとる
  • 能動態を使う
  • 技術的な専門用語を使わない
  • 略語を使う場合には、最初に略語ではない言葉を書き、その直後にカッコで略語を記載する。例:World Health Organization (WHO)
  • 難しい単語を使う必要がある場合は、読者がわかるように説明する

プレインイングリッシュの文体は、対面での会話を意識

  • 常に読者を心にとめ、フレンドリーな文体を使う
  • 対面で話す際と同じ言葉を使う

プレインイングリッシュの構成で重要な7選

  • 一番重要なポイントを最初に書く
  • 事実を述べる
  • 重要なポイントだけ掲載する
  • 順を追って情報を記載する
  • 短い文を使い、カンマなどをなるべく使わない
  • 一文は20単語以下に抑える
  • 一文に盛り込むのは一つのアイデアとする

完成した文書の見直しもプレインイングリッシュの要

文書を見直す際は、次の7点に注意します。

  • 文書の目的が明確にわかるか
  • 内容になじみのない読者でも理解できるか
  • 対面での会話でも同じ言葉を使うか
  • 削除できる不要な単語はないか
  • 短い文に分けることができる文や、短くできる文はあるか
  • 簡単な単語に置き換えることができる難しい単語はあるか
  • 情報の並び順は、わかりやすい並び順か

・Plain Language Association International (PLAIN)
https://plainlanguagenetwork.org/plain-language/plain-language-around-the-world/
・Tourism Greater Geelong & The Bellarine
https://tourismgeelongbellarine.com.au/topics/toolkits/tips-for-writing-in-plain-english/
・NSW Government website
https://www.digital.nsw.gov.au/delivery/accessibility-and-inclusivity-toolkit/communication/plain-and-inclusive-language

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プレインイングリッシュで世界をつなぐ
シンガポールYMCAプレインイングリッシュ・アワード2024:

異なる母国語をもつ多様な人種や文化が共存するシンガポールでは、英語がビジネスや日常生活で広く使われています。2020年には、シンガポール家庭の50%が主に英語を使用しており、その割合は2010年の約30%から大きく増加しています。異なる文化圏の人々が英語を共通語として使うシンガポールは、グローバルなビジネスシーンの縮図といえます。

そんなシンガポールでは、幼稚園から大学までを対象にしたプレインイングリッシュのスピーチ大会、YMCAプレインイングリッシュ・アワードが毎年行われています。2024年の大会も無事終了し、シンガポールYMCAのCEO、Wu Mei Lingが受賞者をたたえるスピーチを行いました。プレインイングリッシュの重要性を説いていますので、その一部を紹介します。

情報を整理し、わかりやすく伝える

プレインイングリッシュは、シンプルでわかりやすい言葉を使って、相手に自分の考えを正確に伝えるためのコミュニケーション方法です。単に使う単語の数を減らしたり、簡単な単語を使うだけではありません。誰にでも理解できるように、情報を整理し、わかりやすく伝えることがもっとも重要です。

現代社会では、ビジネスから日常生活まで、あらゆる場面で効果的なコミュニケーションが求められます。自分の考えを相手に正確に伝え、相手の考えを正確に理解する、誤解を生まないコミュニケーションを実現することができます。

理解してもらうために必要な明確さ、理解するために必要な共感

自分が伝えたいことを理解してもらうためには、複雑な言葉を使わず、シンプルでわかりやすい言葉を選ぶ必要があります。同時に、相手のことを理解するためには、 相手の気持ちに寄り添い、相手の考え方を理解しようとする態度が重要です。共感することで、異なる文化を持つ人々との間に橋を架け、より深いコミュニケーションを実現することができます 。自分のアイデアを伝えるだけではなく、異なる考え方を建設的に議論することができるコミュニケーションは、文化や言葉の壁を取り払い、人々が互いを理解し、協力するための大切な第一歩となります。

参考:YMCA Speaking Awards | YMCA of Singapore

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英語には三つの語源がある?

プレインイングリッシュにおいては、親しみやすく平易な英単語や日常的な英語表現を使うことが重要になります。今回はプレインイングリッシュをより深く理解するために、英語の三つの語源についてご紹介していきます。

現在の英語の語源として、「英語本来語」、「フランス語」、「ラテン語」の三つが挙げられます。英語圏は一時期フランスの支配を受けたことによって、外来語である「ラテン語」とラテン語をルーツに持つ「フランス語」の影響を受けることになりました。現在の英語の六割はフランス語、もしくはラテン語からの借用語であると言われています。
下の図では、同じ意味を持つ「英語本来語」、「フランス語系」「ラテン語系」の英単語をまとめています。

〇三つの語源の類義語群

英語本来語 フランス語系(借用語) ラテン語系(借用語)
Ask Question Interrogate
Go Depart Exit
Help Aid Assistance
Rise Mount Ascend
Gift Present Donation

これらの語源の異なる英単語には、次のような特徴がそれぞれあります。
「英語本来語」…平易で温かみがあるイメージ。
「フランス語系」…中立的で無色透明な語感を持つイメージ。
「ラテン語系」…高尚、人を寄せ付けない高尚なイメージ。


出典:
連載 第6回 なぜ英語語彙に3層構造があるのか?
(https://www.kenkyusha.co.jp/uploads/history_of_english/series/s06.html)
第18回 なぜ英語とフランス語は似ているの? 三省堂ことばのコラム
(https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/ghf18#notes)


プレインイングリッシュでは「英語本来語」がおすすめ!

〇英語語彙の三層構造

「ラテン語系」の単語は音節が多く読みにくいものが多い一方、「英語本来語」は平易で読みやすく、日常生活の中で多く使われています。プレインイングリッシュのガイドブックでも、この「英語本来語」を使うことが推奨されています。

「この英単語はあまり聞きなれないな」または「ちょっと長いな」と感じるものがあれば、外国を由来に持つ「フランス語系」や「ラテン語系」の単語であるのかもしれません。そんな時は、シンプルで聞き馴染みのある「英語本来語」に言い換えてみると読みやすさが高まるので、ぜひ実践してみてはいかがでしょうか。