2024年米国トランスペアレンシー・アワード
各分野で優れた「情報の透明性」を実現した企業が明らかに

企業とステークホルダー間におけるクリアで簡潔なコミュニケーションは、今日のビジネス環境において信頼と成功を築く鍵であると考えられています。しかし、コンセプトは理解できても、優れた透明性を実現している企業はどこにあるのかを知るチャンスはあまりないのではないでしょうか。

企業の透明性の実現をサポートする大手コミュニケーション会社Labrador社は、毎年トランスペアレンシー・アワードを実施し、優れた透明性を体現している米国企業を表彰しています。

透明性を実現するのは正確性やアクセシビリティ

同社では、S&P500の上位250社を評価しています。このプロセスでは、下記の5つの主要分野に焦点を当て234点以上の客観的基準が用いられます。

  • アクセシビリティ:ステークホルダーが必要な情報を容易に見つけることができるか。
  • 正確性:情報は正確で完全か。
  • 比較可能性:異なる企業間で情報を比較できるか。
  • 入手可能性:情報は容易に入手可能か。
  • 明確性:情報は理解しやすいか。

透明性が重要な理由

透明性は、投資家やステークホルダーとの信頼関係を構築する上で極めて重要です。明確なコミュニケーションを行う企業には、以下のようなメリットがあります。

  • 投資家の関心を高める
  • パートナーシップを強化する
  • 株主投票における良い結果につながる

インテル社、ダウ社などが最優秀賞

2024年は、さまざまなカテゴリーで優秀賞を受賞し総合的な透明性で群を抜いたインテル社、ダウ社、マスターカード社などが最優秀賞を受賞しました。情報を包括的に明確な方法で一貫して提供し、投資家やステークホルダーにミッション、ビジョン、戦略をわかりやすいように伝えている点が評価されました。

プレインランゲージなど各分野で評価された企業

最も効果的にプレインランゲージを使った企業:ロックウェル・オートメーション社
招集通知でのプレインランゲージの使用が評価されました。

最優秀招集通知: ロッキード・マーチン社
サマリー、詳細、ビジュアルのバランスが取れた見やすい招集通知を作成しています。

最優秀 ESG 報告書: エコラボ社
目標のサマリーを包括的に記載し、進捗状況の報告、そしてミッションとの明確な整合性を印象づけました。

最も透明性を改善させた企業:フォード・モーター・カンパニー社
特に招集通知と ESG 報告書において大きく前進しました。

さまざまな業界の受賞企業一覧は、トランスペアレンシー・アワードのウェブサイト (TransparencyAwards.com) でご覧いただけます。

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米国トレンド:IRイベント
大規模カンファレンスからターゲットを絞ったコミュニケーションへ

米国で行われるIRカンファレンスへの参加は、米国企業そして海外企業にとっても、投資家との重要なつながりを築く重要な場とされています。そんな中、生まれている変化が注目されています。従来の大規模カンファレンスから、より深い関係を築く小規模かつ能動的なイベントを重視する傾向です。

今日の投資家は、単なる財務データや派手なプレゼンテーションだけではなく、企業文化や価値観、経営実態も投資判断に取り入れています。大規模なカンファレンスではこのような情報は伝えにくく、またターゲットを絞ったコミュニケーションも難しくなっています。

今回は、より深い関係を築くために効果的なIR活動を行う上で注目されているアプローチを紹介します。

カンファレンスの厳選

  • すべてのIRカンファレンスに参加するのではなく、具体的な目標や投資家のニーズに基づいて参加を選択します。
  • 主要な投資家ターゲットや関心のある分野に焦点を当てます。

ノンディール・ロードショーの実施

  • 特定のトピックに焦点を絞った小規模な集まりを通じて、ターゲットを絞ったディスカッションを提供します。
  • 関連性の高いトピックでの会話を通じて、有益なつながりを築きます。

企業全体の紹介

  • 取締役会とのミーティングだけにとどまらず、本社や事業拠点の見学や投資家訪問を行います。
  • 企業文化や事業運営、ESG原則へのコミットメントを直接感じさせることで、投資家に有益な印象を与えます。

エンゲージメント戦略との組み合わせ

  • 一つのアプローチではなく、自社の投資家の嗜好や目的に合わせてさまざまなイベントを組み合わせます。
  • バーチャル・ミーティングやウェビナー、少人数のグループ・ミーティングを大規模な対面イベントと組み合わせて活用します。

メッセージとアプローチの調整

  • 同じプレゼンテーションを繰り返すのではなく、オーディエンスやイベントのテーマに沿ってメッセージやアプローチを調整します。
  • ターゲットとなる投資家をリサーチし、彼らの関心や懸念に対応します。

自社の可能性を理解する投資家との関係を築く

投資家とのつながりを量的なものではなく、質的なものとして捉え、パーソナライズした情報提供やコミュニケーションが求められています。戦略的で的を絞ったアプローチを通じて、長期的な関係を築くことが重要です。

IRの世界でも注目のAI

精度と効率を高めたコミュニケーションが実現する可能性

AI(人工知能)を使ったツールが注目されています。金融業界の大手は既に大規模にAIツールを導入しており、IRの世界でも広く活用されることが期待されています。

AIツールを使うことで、投資家とのコミュニケーションの質を高め、より多くの情報に基づいた意思決定を行い、より効果的なリスク管理ができると考えられています。今回は、AIツールを活用すると、どのようなメリットがあるのかをご紹介します。

自動でのデータ分析と解釈が実現

財務データ、ニュース記事、ソーシャルメディアへの投稿など、企業の株価に影響を与える情報を含む大量のデータの分析と解釈を自動化することができます。市場センチメントや競合他社の動向など、企業の業績に影響を与える要因に関する貴重な洞察を今まで以上の精度と効率で得ることができます。

リアルタイムで投資家センチメントを知る

リアルタイムで市場イベントをモニタリングし対応するのにも役立ちます。ソーシャルメディアの投稿、ニュース記事、その他一般に入手可能なデータをモニタリングし、潜在的投資家のセンチメントを判断できます。たった1つのツイートやニュース記事が即座に企業の株価に影響を与える可能性がある今の時代に特に重要です。

精度の高い投資家ターゲティング

適切なタイミングで適切な投資家を特定し、ターゲティングするために使用できます。また、投資家にとって最も重要なトピックを特定し、それに応じてIRコミュニケーションをパーソナライズすることも可能です。 

投資家との情報共有が簡単に

チャットボットなどのAIを活用したツールで、一般的な質問に回答し、基本的な情報を迅速かつ効率的に提供することができます。機械的でない、パーソナライズされた方法で使用します。また、AIの使用を表明することは、信頼関係を築く上で重要です。

リスク管理の改善

潜在的なリスクを特定し、それを軽減する戦略を策定することで、企業がより効果的にリスクを管理するのにも役立ちます。

課題は信頼とプライバシー

AIツールによって生成された情報が正確で信頼できるものであることを保証することは大きな課題です。また、AIによって提供された情報の責任をだれが持つのかも課題になっていくと考えられます。

また、AIツールの使用による知的財産権の違反やデータやプライバシーに関する課題の可能性も考慮し、注意していく必要があります。

変わる時代に重要な明確なコミュニケーション

大きな可能性を秘めたAIが世界を変える日も遠くないかもしれません。それでも、IRの基本であるシンプルで明確な言葉を使ったコミュニケーションが重要であることは変わることはありません。