プレインイングリッシュで世界をつなぐ
シンガポールYMCAプレインイングリッシュ・アワード2024:

異なる母国語をもつ多様な人種や文化が共存するシンガポールでは、英語がビジネスや日常生活で広く使われています。2020年には、シンガポール家庭の50%が主に英語を使用しており、その割合は2010年の約30%から大きく増加しています。異なる文化圏の人々が英語を共通語として使うシンガポールは、グローバルなビジネスシーンの縮図といえます。

そんなシンガポールでは、幼稚園から大学までを対象にしたプレインイングリッシュのスピーチ大会、YMCAプレインイングリッシュ・アワードが毎年行われています。2024年の大会も無事終了し、シンガポールYMCAのCEO、Wu Mei Lingが受賞者をたたえるスピーチを行いました。プレインイングリッシュの重要性を説いていますので、その一部を紹介します。

情報を整理し、わかりやすく伝える

プレインイングリッシュは、シンプルでわかりやすい言葉を使って、相手に自分の考えを正確に伝えるためのコミュニケーション方法です。単に使う単語の数を減らしたり、簡単な単語を使うだけではありません。誰にでも理解できるように、情報を整理し、わかりやすく伝えることがもっとも重要です。

現代社会では、ビジネスから日常生活まで、あらゆる場面で効果的なコミュニケーションが求められます。自分の考えを相手に正確に伝え、相手の考えを正確に理解する、誤解を生まないコミュニケーションを実現することができます。

理解してもらうために必要な明確さ、理解するために必要な共感

自分が伝えたいことを理解してもらうためには、複雑な言葉を使わず、シンプルでわかりやすい言葉を選ぶ必要があります。同時に、相手のことを理解するためには、 相手の気持ちに寄り添い、相手の考え方を理解しようとする態度が重要です。共感することで、異なる文化を持つ人々との間に橋を架け、より深いコミュニケーションを実現することができます 。自分のアイデアを伝えるだけではなく、異なる考え方を建設的に議論することができるコミュニケーションは、文化や言葉の壁を取り払い、人々が互いを理解し、協力するための大切な第一歩となります。

参考:YMCA Speaking Awards | YMCA of Singapore

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日常的な単語や表現を使う~実践~

本メールマガジンではプレインイングリッシュの重要性やポイントをご紹介してまいりました。

公文書でのプレインイングリッシュの使用が義務付けられているアメリカ。「効率的に要点をつかめ、速く読め、理解しやすい」プレインイングリッシュによって多方面でその効果を発揮しています。

過去、アメリカ退役軍人省の障害年金受給案内にてプレインイングリッシュの導入前後でひとりの担当者に対し問合せ案件が94件から16件に減少したという報告も出ています。業務効率の向上、市民のストレスの軽減につながりました。

使うことで様々なメリットがあるプレインイングリッシュ。今回はより具体的にプレインイングリッシュに触れることができるリストをご紹介いたします。

Use simple words and phrases (plainlanguage.gov)

このサイトではプレインイングリッシュとして推奨される単語・句240個のリストがあります。また、使用しないほうがよい表現も併せて記載されています。Don’t say/Sayとして区分されており、ご自身が作成した英文を検証することが可能です。

リストから一部抜粋

Don’t say Say日本語訳
equitablefair公平な、公正な
expirationend〔契約などの〕終了、満了、満期
frequentlyoften頻繁に
in the amount offor~の量の
maintainkeep, support〔動作を〕持続[継続]する、
〔現状を悪化させないように〕保つ

作成した英文や日頃使っている単語とリストを照らし合わせてみては、いかがでしょうか。

  • 予想以上にDon’t’ sayの単語を多く使っていた。
  • Don’t Say/Sayを比較してSayの単語はスッと理解できた。

などのさまざまな発見があったかもしれません。

プレインイングリッシュの大切なポイントは理解したけれども、実践するとなると難しい。そんな皆様はぜひリストを参照しDon’t SayをSayに置き換えて使ってみることから始めてみましょう!


出典:
『アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア 政府公認
伝わる短い英語 新しい世界基準 Plain English』
浅井満知子著(東洋経済新報社)
plainlanguage.gov(An official website of the United States government)
Home (plainlanguage.gov)

プレインイングリッシュの秘訣

改めてプレインイングリッシュの基本を見直してみましょう。今回は、読み手に伝わる文章を書くためのコツを3点に絞って紹介します。

Business man’s hand pointing at POINT” word on white board
  1. 意味のない単語はドラフトの段階で削除する

文章を書くときに、なんとなく耳障りの良い言葉を使ってしまうことがあると思います。しかし、耳障りが良いだけの単語はプレインイングリッシュでは必要ありません。ドラフトを推敲する際に、削除しましょう。

例えば、英語で使われがちなのはgenerally(一般的に)、basically(基本的に)、actually(実際に)、kind of(ある意味)、really(本当に)、virtually(事実上)、totally(完全に)、essentially(本質的に)、completely(完全に)、practically(実質的に)、literally(文字通り)、just(ただ)などがあります。

よく耳にする一般的な表現で、英語として問題はありませんが、特に意味を持ちません。

ちなみに、日本語の英訳では、namely(すなわち)、regarding(~に関して)、in so far as(その限りにおいて)、that is to say(つまり)、concerning(~に関して)、moreover(さらには)といった単語を多く目にします。日本語から直訳されているのですが、意味がないと判断できる場合、翻訳しないことで、伝わりやすい高品質の英訳を実現できます。

2.冗長な部分は削除する

同じような考えやアイデアを繰り返すことは避けます。ドラフトを読み返し、繰り返しを見つけたらハイライトするとよいでしょう。統合レポートのような複数の人が参加する大きなプロジェクトの場合、全員がアクセスできるようにオンラインツールを活用すると、作業を効率化することができます。

3.自分を主語として語らない

自分を主語として語ってしまうと、文章が長くなってしまい、読み飛ばされたり、最後まで読んでもらえない可能性が高くなります。より簡潔で直接的、かつ要点を押さえた文章にするためには、主語を工夫します。

例を使って説明します。

修正前:

I want to point out a few challenges we face with the current staffing environment. They are: x, y, and z.

訳:私は、現在の人材配置状況で直面しているいくつかの課題を指摘したいと思います。それはx、y、zです。

修正後:

Our current staffing challenges include, x, y, and z.

訳:人材配置に関する現在の課題は、x、y、zです。

書き手を主語として語っている修正前の文では、単語数も多く重要な情報が最後にきてしまっています。修正後は、より少ない言葉で、ポイントを的確に伝えることができています。