英文の表やグラフ内での記号表記について

近年、決算短信や説明会資料だけでなく、有価証券報告書や統合報告書などのIR資料も英文開示の必要性が高まってきています。
その中で、日本語にはあって、英語にはない表現が見受けられます。例えば、マイナス表記です。日本語では、△で表現されますが、英語では括弧などで表現されます。本文では、表やグラフの表現について表記の違いについてみていきましょう。

記号表記の違い

日本語で開示された文書をみてみると、視覚的に正誤を表す記号「◎」、「〇」、「×」などで表現されていることがあります。日本人にとって、「◎」=非常に良い、「〇」=良い、正しい意味、「×」=悪い、誤った意味というように、視覚的に一目ですぐ理解ができます。

一方で、英語話者にとっては、どうでしょうか。
英語では、良い、正しい意味の場合「✓」で表現し、反対に、悪い、間違いなどの意味の場合は、「×」のほかに「-」を使用し表現することもあります。
そのため、英訳をする場合には、文書だけではなく、表内の記号についても上記のように、置き換えるなど表現の工夫が必要です。
また、記号ではなくとも資料の内容によっては、「High」や「Low」など単語で置き換えることで、読者の理解を仰ぐ表現も可能です。

文章のみならず、誤解のない文書とするために表内の記号の表現にも工夫することや、気を付ける必要があります。

漢字表記とひらがな表記

文章を書くうえで漢字表記にしようか、ひらがな表記にしようか、迷った経験はありませんか?
一つの文章の中で、同じ意味なのに複数の表記が混在していると、読み手に正確な情報が伝わりにくくなってしまいます。

文化庁では、公用文における基準を定めた『公用文作成の要領(公用文改善の趣旨徹底について)』が昭和26年に作成され、令和4年1月11日の新たな内容の周知により、公用文作成の考え方が改められました。

そこで、今回は『公用文作成の考え方』等を参考に、漢字表記とひらがな表記の推奨例をご紹介いたします。


ひらがな推奨
①常用漢字でないもの(固有名詞は対象外)
(例)飴→あめ 繋ぐ→つなぐ 馴れる→なれる 捧げる→ささげる

②補助動詞・補助形容詞
(例)~(し)て行く→ていく ~(し)て頂く→ていただく ~(し)て下さる→てくださる

③接続詞
(例)且つ→かつ 従って→したがって 但し→ただし 又→また 尚→なお

※文章の内容によっては漢字が推奨されている接続詞もあります。
(例)及び 並びに 又は 若しくは

④助詞
(例)位→くらい 程→ほど 等→など(「等」は「とう」と読むときに用いる。)

漢字推奨
①副詞は漢字で書く
(例)余りに 恐らく 既に 更に 例えば 一旦 全く


今回ご紹介したものは一例で、必ずそうでなくてはならないというわけではありません。
一般的に一つの文章の中で「漢字30%:ひらがな70%」の割合が読みやすい文章と言われています。

使い分けを意識することで、読み手にとって読みやすい、伝わりやすい文章を目指してみてはいかがでしょうか。

出典
公用文作成の考え方(建議) (付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説
公⽤⽂における漢字使⽤等について

オールキャップスを多用していませんか?

今回はキャピタライズシリーズ第2弾として、オールキャップス(全ての文字を大文字にすること)についてご説明します。

ネイティブスピーカーでない方が英語で文章を書く際、強調したい文章や単語を全て大文字で表記していることがあります。同様に、大文字表記が正式名称の企業名などを文章中でもそのまま表記しているケースも数多く見られます。(企業名のキャピタライズルールについては、前回の記事をご覧ください。)

実は、不用意にオールキャップスを使用することは推奨できません。その理由は大きく2つあります。

一つ目は、語気が強く感じられるためです。
オールキャップスで書かれている文章は「うるさい文章」とされており、会話に例えると叫んでいるような印象になります。そのため、読み手にとってはどこか怒っているように感じられてしまい、意図せず読者を不愉快にさせてしまう可能性があります。

二つ目は、文章が読みづらくなるためです。
アメリカの学者の研究で、全て大文字で書かれた文章は頭文字のみ大文字の文章と比べて読む速度を著しく遅らせることがわかっています。
また全文を大文字で表記していない場合でも、文章中に登場する企業名や地名、人名などをオールキャップスにすると、ネイティブにとっては単語が急に不自然に強調されているように感じられ、読みづらいと思われることが多いです。

このように不必要なオールキャップスは避けるべきですが、逆に使用すべき場面もあります。それは、頭字語の場合です。
頭字語とは、複数の単語のまとまりを頭文字だけに省略した言葉のことです(例:METI [Ministry of Economy, Trade and Industry])。このような言葉は全て大文字で表記することが一般的です。逆を言うと、頭字語でないのにオールキャップスにしていると、何らかの略称と誤解されてしまうこともあります。

適切なキャピタライズルールを覚え、ネイティブにとって自然で読みやすい英文を実現しましょう。