ESG投資における注目の2019年トレンド

▼ESGがさらに投資戦略に組み込まれる1年に
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ここ数年で大きな変化を遂げているESG投資の分野で、
今年特に注目すべきトレンドを紹介します。

▼財務情報に統合された形で提供されるESG戦略
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これまで、資産運用会社は自分たちの投資価値に合わない株式は、
ポートフォリオから排除してきました。しかし、現在では、
ESGを従来の財務情報をサポートする情報として活用するように
なってきており、特に長期投資家に価値を提供する投資として、
多くの注目を集めています。

これは、ESG関連のデータが多数入手可能になり、研究が進んだ
ことも一因です。ESG関連の情報が投資プロセスにとって重要
であることが証明されてきたのです。また、米国サステナビリティ
会計基準審議会(SASB)などのフレームワークが整備されてきている
ことで、投資家にとって重要なESG活動を企業が開示しやすい環境が
生まれてきています。

さらに、特にヨーロッパにおいて、投資プロセスにESG情報を
含めることが義務化されるなど、規制当局も動きだしています。

▼気候変動に関するソリューションは、リスク削減から適応へ
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これまでは、企業がどのように気候変動のリスクを削減するかが
特に注目されていました(二酸化炭素の削減など)。
しかし、異常気象が増え、気候変動が経済活動に与える影響が広く
認識されるようになってきた現在では、気候変動にどのように対応
していくのかに関する情報開示も求められています。

▼そのほかの注目事項
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・従来、ESGに関するデータを入手できる第三者機関はほとんど
存在せず、投資家は一つの情報源からESGデータを入手していました。
しかし、ESGがより注目されている現在、複数の情報源から情報を
入手することができるようになっています。

・ESGが投資指標としてさらに注目をされるにあたり、従来の財務情報
と同じように成果を測定できるシステムが求められるように
なっています。また、エネルギー強度やESG全体のプロファイルなど
を含めた質の高いESG報告書に対する要求も高まっています。

・ESGに対応するためには、能力のある人材を確保することが
必要不可欠です。また、ESG関連の情報を統合するために、
IR関連の人材にトレーニングを提供し、データ、分析レポートの
インフラストラクチャに投資することも求められています。

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◆参考・出典一覧
2)『Five trends changing the ESG investing landscape in 2019』
IR Magazine 1月25日
https://www.irmagazine.com/buy-side/five-trends-changing-esg-investing-landscape-2019

機関投資家、今まで以上にESG関連の株主提案を支持

▼個人投資家と機関投資家の違いも浮き彫りに
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環境や社会問題に関連する株主提案への支持が5年前と
比べ10%増加(19%から29%)していることがブロードリッジ社と
PwC社ガバナンスインサイトセンターによる
調査(米国4,090社を対象)で明らかになりました。

また、この調査では機関投資家と個人投資家の投票傾向の
違いも浮き彫りになりました。2018年、機関投資家と
個人投資家の間での違いが目立った調査結果を紹介します。

・社会・環境に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家はわずか16%
・政治献金に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家は21%
・プロキシーアクセスに関する提案に賛成した機関投資家は35%、
対して個人投資家は13%
・所有する株式の投票権を行使する機関投資家は91%、
対して個人投資家は28%のみ
・プロキシーアクセスに関する株主提案の数は、
2015年の81件から、2018年には24件に減少
(これはプロキシーアクセスを 採用している企業が
増加したことが主な理由。S&P 500社では65%が採用)

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◆参考・出典一覧
『Social and environmental support continues to
grow among institutional investors』
IR Magazine 2018 年10月4日
https://www.irmagazine.com/esg/social-and-environmental-support-continues-grow-among-institutional-investors

アクティビスト活動の未来

▼2019年以降の傾向と対策
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2018年、アクティビスト活動は大きく増加しました。
そのような状況の中、アクティビスト・キャンペーンが
企業に与える影響、そして今後の傾向についての注目すべき
トピックスが発表されました。その中でも特に留意すべき点を
紹介します。

▼アクティビストの影響はキャンペーン後も継続
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アクティビスト活動が仕掛けられると、キャンペーンの要求が
満たされたからと言って、アクティビストからの影響が
なくなるわけではありません。特にアクティビストによって
新しく取締役が据えられた場合など、取締役会の方針が大きく変わり、
M&Aや事業戦略、経営陣全体にも変化が起きる場合があります。

また、一度アクティビズムのターゲットになると、
再度ターゲットになる可能性も高くなっています。
2017年にアクティビスト活動のターゲットになった企業の20%は、
過去5年間においてもターゲットになっています。

▼アクティビストの活動はよりアグレッシブに
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近年のアクティビスト投資ファンドの業績は、
芳しくありません。そのため、米国においては簡単に利益を
狙えそうな企業がターゲットにされています。
アクティビスト活動によって利益が出ていないということは、
将来的にはアクティビスト活動が減少する可能性を示唆しています。
しかし、同時に、利益の獲得を目指して、M&AやCEOの
すげ替えなどのアグレッシブな活動が行われる可能性もあります。
また、同じ理由からアクティビスト活動が米国から
海外へと拡大しています。

▼セクハラに関する問題に、さらに注目
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アクティビスト投資家は、キャンペーンや株主投票で利用できる
情報を探すために、企業の内情に関する情報収集を行います。
特に2019年以降は職場でのセクハラやパワハラなどに関する
情報を入手して利用してくることが予測されています。

今後、有名企業に対するアクティビスト活動の際に、
このような情報がガバナンス問題やCEO交代の引き金に
なると考えられます。

▼能動的に計画を立てて、リスクを緩和する
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アクティビスト活動に対応するには、先回りして能動的な対策を
取ることが不可欠です。また、業績をしっかり出すことに集中し、
計画を確実に遂行することも効果的なリスク削減になります。
さらには「アクティビストの立場で考える」ことも大切です。
アクティビスト活動の標的になり得る自社の課題を特定した上で、
対策を練る必要があるかを検討し、もし必要がある場合は
なるべく早めに行動します。株主とのエンゲージメントについては
定期的に評価し、投資家からフィードバックを得るようにすると
よいでしょう。

▼リスク緩和に向けたアドバイス
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•投資家やアナリストが抱いている経営に関する懸念について、
取締役会に情報を提供します。
アクティビズムに関する情報をしっかりと共有し、
課題を認識できている経営陣は、いざという時に優れた
リーダーシップを発揮します。

•取締役に対する評価を行い、
リスクが特定された場合は緩和のための対策を行います。

•今後、M&A関連のアクティビズムがよりアグレッシブになる
可能性があります。

•CEO交代に不安要素があると、アクティビストを
引き付ける原因となります。

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◆参考・出典一覧
『Shareholder Activism – 1H 2018 Developments,
the Impact and Future of Activism, and Updated Practice Points』
Lexology 2018年9月24日
https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=1f3147c2-a0e7-4ab6-8c44-4fdb55018de6