取締役会の多様性が投資家からの信頼につながる理由

ステークホルダーの多様性を反映した取締役会

取締役会の多様性は、企業の評判や投資家の信頼に大きな影響を与えると言われています。今回は基本に立ち戻り、取締役の多様性が企業にとってどのように有益なのかを振り返っていきます。

企業に求められているのは、ステークホルダーの多様性を反映した取締役会です。例えば、女性の顧客が多い企業では、女性の役員が多い方がステークホルダーからの信頼が向上します。また、異なる背景、経験、視点を持つメンバーが集まることで、意思決定の質が向上し、リスク管理を強化し、より包括的な企業文化を育むことができると言われています。

多様性によって向上する5つの分野

  • 意思決定の質: 多様性があるということは、あらゆる視点の見方が存在し、多様な意見が交換されることです 。異なる背景を持つ人々が協力することで、集団思考に陥りにくくなり、当たり前を疑い、変化の激しい時代に必要な意思決定が実現します。
  • リスク管理:均一なグループでは見落としがちなリスクを特定し、軽減することにつながります。ステークホルダーの多様性を反映した取締役会は、ステークホルダーに関連する課題を予測し、対策を講じることができます。
  • 企業イメージ:投資家をはじめステークホルダーは、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンにコミットする企業を重視しています。異なる視点を受け入れ、多様な労働力を重視・尊重していることを強く示します。
  • イノベーション:異なる背景を持つ人々が一緒に働くことで、新しいアイデアを生み出し、現状を変える可能性が高まります。これにより、多様な顧客のニーズに応える革新的な製品やサービスが生まれることがあります。
  • 多様な労働力の確保:多様な取締役会は、組織全体に対して「多様性が重視され、尊重されている」という強いメッセージを送ります。あらゆる背景を持つ従業員が尊重され、より多様な労働力を魅了することができます。これは労働力不足が予測されている時代にとって非常に大切です。

このように、取締役会の多様性を向上させることは、多様で競争の激しいビジネス環境での成長、そして成功のための重要な足場となります。多様性を促進するための具体的な措置を講じることや、多様性に関するトレーニングの提供、すでにステークホルダーの多様性を反映した取締役会である場合はその旨をしっかりとアピールすることが重要です。

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2024年のトレンド:9%の企業がIRワークフローで生成AIを導入
情報管理やコミュニケーションのカスタマイズに注目

2023年は、生成AIが世を席捲した年でした。IR関係のテクノロジーを提供するIrwin社の調査によると、生成AIを試した企業は42%に上ります。

2024年は、生成AIが注目される一方で、対面でのイベントが再開されるなど、注目される変化が起きています。IR関係者は生成AIの何に注目していて、実際にどの程度導入しようとしているのでしょうか。

IR業界はAIの何に注目しているのか

生成AIについて、IRオフィサ―(IRO)がもっとも注目しているのは、同業他社や市場の出来事やニュースを効率的に要約する能力です。膨大な量の情報を管理・解釈するためにAI活用へ強い関心が寄せられています。

IRコンサルタントは、データ分析のサポートや報告精度の向上、センチメント分析、投資家とのコミュニケーションやアウトリーチ活動のカスタマイズなどの用途において生成AIに注目をしています。

IRワークフローでの生成AI導入率は9%

注目は大きいものの、IRワークフローで生成AIを使用している企業はわずか9%です。
回答者の大半がIR活動にAIを導入するのはまだ早いと回答しています。

  • 将来的にAIを使用する予定はあるが、現在は使用していない:IROの20%
  • 全く使用するつもりはない:IROの23%
  • AIが日々のワークフローをどのようにサポートできるか、まだ学習中:IROの43%

実際の導入については、消極的な回答者が多くなっています。しかし、回答者の半数はAIを日常業務にどのように組み込むことができるかを模索しており、将来的にAIツールを理解し、採用する可能性を示唆しています。

対面でのイベントの再開

AIというテクノロジーに注目が集まる一方で、バーチャルイベントから対面でのイベントへのシフトも見込まれています。
60%のIROが、昨年より多くの対面でのイベントを計画していると回答し、24%がバーチャルイベントへ注入していた労力を対面でのイベントにシフトさせるなど、テクノロジー一極への注目から、対面でのコミュニケーションの復活が予測されています。

投資家との信頼関係を築くための3つの秘訣

価値を創造するIR(インベスター・リレーションズ)の基本

目まぐるしい変化の時代、IRもまた複雑になり、IRご担当者に求められることも多くなる一方です。今回は基本に立ち返り、優れたIRを作り出す普遍的な要素を振り返っていきます。

時代やトレンドが変わっても、優れたIRには、以下の3つの要素が必ず含まれています。

1. 一貫性、明確性、包括性:IRのゴールデン三角形

  • 一貫したメッセージ:会社のミッション、ビジョン、戦略、目標を明確にするための核となるストーリーが重要です。プレスリリース、プレゼンテーション、経営陣インタビューなど、すべてのコミュニケーションチャネルで、一貫したメッセージを伝えます。
  • 明確なコミュニケーション:専門用語や専門的すぎる表現は避け、すべての投資家が理解しやすいプレインランゲージで説明します。また、図表などのビジュアルも活用します。
  • 包括性:自社にとっての課題や潜在的リスクを公表し、克服するための戦略も強調することで、バランスの取れた視点を提供します。

2. 人間関係の構築

単に情報を発信するだけでなく、投資家と長期的な関係を築くことが重要です。具体的には、以下のことを意味します。

  • 積極的な関与:決算期だけでなく、定期的に投資家とコンタクトをとりましょう。投資家向けのカンファレンスの開催、業界イベントへの参加、オープンな対話を促進するための個別ミーティングも必要です。
  • 投資家のニーズを理解する:投資スタイルやリスク許容度に応じ、投資家層ごとにコミュニケーションを調整します。
  • フィードバックを活用:投資家からのフィードバックを活用して、コミュニケーション戦略を改善していきます。

3.  透明性の確保

信頼を構築するためには、透明性が大切になります。

  • タイムリーな情報開示:決算や重要ニュースは迅速かつ正確に開示します。
  • オープンなコミュニケーション:会社の業績、課題、機会について正直であることが大切です。
  • コミュニケーション窓口:投資家からの問い合わせに対応するシステムを確立するなど、投資家の質問にすぐに答えられるようにします。

以上、規制や環境が変わり続ける世の中で、基本に立ち返り、足元を見失わないためのヒントとなれば幸いです。