2024年のトレンド:9%の企業がIRワークフローで生成AIを導入
情報管理やコミュニケーションのカスタマイズに注目

2023年は、生成AIが世を席捲した年でした。IR関係のテクノロジーを提供するIrwin社の調査によると、生成AIを試した企業は42%に上ります。

2024年は、生成AIが注目される一方で、対面でのイベントが再開されるなど、注目される変化が起きています。IR関係者は生成AIの何に注目していて、実際にどの程度導入しようとしているのでしょうか。

IR業界はAIの何に注目しているのか

生成AIについて、IRオフィサ―(IRO)がもっとも注目しているのは、同業他社や市場の出来事やニュースを効率的に要約する能力です。膨大な量の情報を管理・解釈するためにAI活用へ強い関心が寄せられています。

IRコンサルタントは、データ分析のサポートや報告精度の向上、センチメント分析、投資家とのコミュニケーションやアウトリーチ活動のカスタマイズなどの用途において生成AIに注目をしています。

IRワークフローでの生成AI導入率は9%

注目は大きいものの、IRワークフローで生成AIを使用している企業はわずか9%です。
回答者の大半がIR活動にAIを導入するのはまだ早いと回答しています。

  • 将来的にAIを使用する予定はあるが、現在は使用していない:IROの20%
  • 全く使用するつもりはない:IROの23%
  • AIが日々のワークフローをどのようにサポートできるか、まだ学習中:IROの43%

実際の導入については、消極的な回答者が多くなっています。しかし、回答者の半数はAIを日常業務にどのように組み込むことができるかを模索しており、将来的にAIツールを理解し、採用する可能性を示唆しています。

対面でのイベントの再開

AIというテクノロジーに注目が集まる一方で、バーチャルイベントから対面でのイベントへのシフトも見込まれています。
60%のIROが、昨年より多くの対面でのイベントを計画していると回答し、24%がバーチャルイベントへ注入していた労力を対面でのイベントにシフトさせるなど、テクノロジー一極への注目から、対面でのコミュニケーションの復活が予測されています。

投資家との信頼関係を築くための3つの秘訣

価値を創造するIR(インベスター・リレーションズ)の基本

目まぐるしい変化の時代、IRもまた複雑になり、IRご担当者に求められることも多くなる一方です。今回は基本に立ち返り、優れたIRを作り出す普遍的な要素を振り返っていきます。

時代やトレンドが変わっても、優れたIRには、以下の3つの要素が必ず含まれています。

1. 一貫性、明確性、包括性:IRのゴールデン三角形

  • 一貫したメッセージ:会社のミッション、ビジョン、戦略、目標を明確にするための核となるストーリーが重要です。プレスリリース、プレゼンテーション、経営陣インタビューなど、すべてのコミュニケーションチャネルで、一貫したメッセージを伝えます。
  • 明確なコミュニケーション:専門用語や専門的すぎる表現は避け、すべての投資家が理解しやすいプレインランゲージで説明します。また、図表などのビジュアルも活用します。
  • 包括性:自社にとっての課題や潜在的リスクを公表し、克服するための戦略も強調することで、バランスの取れた視点を提供します。

2. 人間関係の構築

単に情報を発信するだけでなく、投資家と長期的な関係を築くことが重要です。具体的には、以下のことを意味します。

  • 積極的な関与:決算期だけでなく、定期的に投資家とコンタクトをとりましょう。投資家向けのカンファレンスの開催、業界イベントへの参加、オープンな対話を促進するための個別ミーティングも必要です。
  • 投資家のニーズを理解する:投資スタイルやリスク許容度に応じ、投資家層ごとにコミュニケーションを調整します。
  • フィードバックを活用:投資家からのフィードバックを活用して、コミュニケーション戦略を改善していきます。

3.  透明性の確保

信頼を構築するためには、透明性が大切になります。

  • タイムリーな情報開示:決算や重要ニュースは迅速かつ正確に開示します。
  • オープンなコミュニケーション:会社の業績、課題、機会について正直であることが大切です。
  • コミュニケーション窓口:投資家からの問い合わせに対応するシステムを確立するなど、投資家の質問にすぐに答えられるようにします。

以上、規制や環境が変わり続ける世の中で、基本に立ち返り、足元を見失わないためのヒントとなれば幸いです。

日本語の原文が翻訳の質を左右する?!

より高品質な翻訳を実現するための注意点

2025年4月からの東証プライム市場上場企業に対する英文開示義務化に伴い、企業にとって日本語文書の英語翻訳はますます重要になっています。実は、翻訳を依頼するにあたり、日本語文書自体にひと工夫することで、より高品質な英訳を実現することができます。

今回は、翻訳会社に依頼する日本語文書を作成するにあたり、質の高い翻訳につながるポイントをご紹介します。

1. 読みやすい日本語

一般的な日本人にとって読みやすい日本語は、翻訳者にとっても翻訳しやすい日本語です。読みやすい原文は、翻訳者が原文の解釈に費やす時間を短縮し、読者を意識した質の高い翻訳を生み出すために時間をかけることができます。

  • 短い文を使う: 長い文は読みづらいため、適度に短く区切ることをお勧めします。
  • 専門用語は避けるか定義する: 専門用語や難しい表現は避け、誰にでもわかる表現とすることをお勧めします。専門用語が必要な場合は、定義を掲載するとよいでしょう。
  • 繰り返しを避ける:繰り返しが多い日本語は、読みにくいだけでなく、翻訳を依頼する際のコストがかさんでしまいます。何を伝えたいかを明確にした、繰り返しのない文書は、読みやすさの向上とコスト削減の両方につながります。

2. 文化的配慮をした表現

翻訳者は、翻訳後の表現がその文化圏にとって適切かを常に判断しています。必要に応じて意訳を行いますが、よりスムーズな翻訳プロセスのためには、次のことに注意してください。

  • 日本独自の表現や慣用句を避ける:翻訳対象となる言語圏の文化や習慣に馴染みのない日本独自の表現や慣用句を避けることで、翻訳がスムーズに進み、誤解が生まれない表現につながります。
  • 文化的に中立な表現を使用する:翻訳対象となる言語圏の文化や価値観を尊重し、文化的に不適切とされる表現は避けましょう。

3. コミュニケーションとコラボレーション

  • 背景情報を提供する:翻訳会社に対して、資料の内容や作成目的、ターゲットとなる海外読者などの背景情報を提供することで、より希望に沿った翻訳が実現します。
  • フォーマットに適した表現:プレゼンテーション用のパワーポイントに余白がなく、読めないほど大量の文章や図表などを詰め込んでいませんか?そのようなパワーポイントを作成すると、英文になった時に、フォーマットに合わない文書になってしまいます。フォーマットに問題がないか、翻訳会社に相談してみるとよいでしょう。
  • 指定の訳語を掲載した用語リストを提供する:指定の訳語がある場合は、翻訳会社に用語リストを提供することで、訳文を確認する際の手間が省け、翻訳プロセスがスムーズになります。
  • どこまで原文に忠実な訳が良いのかを考える:原文に忠実に訳することにこだわりすぎると、翻訳言語圏の読者の誤解を招いたり、不快感を与えたりする可能性があります。読者が受ける印象を同じにしたいのか、単語と単語の意味を同じにしたいのかは、同じ翻訳でも全く違うプロセスになります。

まとめ

これらのポイントを参考に、日本語文書や翻訳依頼を工夫してみてください。より高品質な英訳を実現し、グローバルな情報発信を成功させるお力になれれば幸いです。