Covid-19パンデミックにおける機関投資家の動向

▼ 製薬会社に企業を超えた協力を要請:米国
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300の機関投資家をメンバーに持つ、AUM (運用資産)5,000億ドルの
Interfaith Center on Corporate Responsibility (ICCR)は、
企業の社会的責任を推進する米国の協会です。

同協会のメンバーである投資家は、14の製薬会社に対して、
COVID-19と戦うためのヘルスケアテクノロジーの開発に向けて
企業間で協力することを公開書簡で要請しました。
より多くの診断ツール、治療、そして完成した場合はワクチンを
あらゆる人そして地域に素早く安全に届けることを求めています。

この書簡では、次のことも求めています。
・研究者との間で化合物、リソース、データを共有
・知的財産権を行使しないことで発展途上の国をサポート

▼ ヘルスケアおよび金融をサポートする債券に投資:スウェーデン
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スウェーデンの地方政府を中心とした年金基金であるKPA Pensionは、
Covid-19が社会そして経済に与える影響を緩和するための債券2種類に
約5,320万ドルを投資しています。投資した債券は
北欧の国々とバルト諸国のヘルスケアと金融サポートのために
Nordic Investment BankのものとEuropean Investment Bankのものです。
KPA PensionのCEOはこの投資に関して、
自社のクライアントに直接利益をもたらすものであると表明しています。

▼ 引き続き求められる透明性:イギリス
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イギリス上場企業の3分の1の株式を所有する資産管理団体
Investment AssociationがFTSE350企業に対して、
今回のパンデミックを配慮して「適切かつ持続可能な方法で」
配当金の支払いを行うように公開書簡を通じて要求しました。

この中で、現在の特殊な経済状況において、
株主は配当金における透明性を求めていると述べています。
また、できるだけ予定通りの時間軸で配当することを求めています。

公開書簡には次の内容も含まれています。
・ シェアホルダーコミットメント
・ エンゲージメント
・ 年次株主総会
・ 役員報酬
・ 財務報告
・ 追加資金

さらに、Squarewell Partnersでは、COVID-19パンデミックの中、
投資家が良き市民としての責任を果たすためのガイダンスを
発表しています。機関投資家20社(管理資産総額7兆ドル)と
コミュニケーションを取り、コロナウイルスによる経済活動の制限や
不透明な市場環境において、役割を果たすべく
ガンダンスに従うように要請しています。

このガイダンスでは、次の分野について、
投資家が企業に対して求めていることを記載しています。
・ コミュニケーション
・ 配当金の支払い
・ 役員報酬
・ 年次株主総会

▼ グリーンボンドが好調
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NN Investment Partnersの分析によると
コロナウイルスによる危機が発生して以来、
長期および短期の両方の視点から、通常のボンドに比べ
グリーンボンドの動きが若干好調であることがわかりました。
この理由の一つとして、通常グリーンであると判断されない
航空会社やエネルギー業界の企業が活動できていないことが
原因であると分析されています。

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◆ 参考・出典一覧
『Coronavirus Round-up: Investors target pharmaceutical companies』RESPONSIBLE INVESTOR 2020年4月8日
https://www.responsible-investor.com/articles/coronavirus-round-up-investors-target-pharmaceutical-companies

投資家、リターンのあるエリアに特化した  資本配分を求める傾向

▼ 長期的な価値を生み出すエリアを理解する
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企業のトップ経営陣や取締役は、資本配分に関する様々な
意思決定をする必要があります。しかし、衝突する複数の
ゴールを掲げていることなどが原因で、資本配分を
最適化することができていない企業が多くあります。
効果的な資本配分を行うためには、高いリターンを期待できる
エリアにより多く再投資する必要があります。そのため、
自社のビジネスにおいて、どこで長期的な価値が
生み出されているのか(あるいは破壊されているのか)、
その理由についても明確に理解することが不可欠です。
適切なメトリックを活用し、自社が市場において
どの程度魅力的な存在であるのかを把握すると同時に、
戦略的なポジションを正確に理解する必要があります。

▼ 説明することで推測を避ける
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また、戦略的なコミットメントや説明責任の文化が
存在しない企業では、経営陣の意思決定は無難を
目指しまんべんなく資本を配分するという結果になりがちです。
そのため、資本配分に自信がない企業が多く、
投資家に対して詳細を説明することを避ける傾向にあります。
また、同業他社に計画が知られてしまうことを恐れて、
情報を公開することを警戒する傾向にもあります。

しかし、投資家は資本配分決定のプロセス、経営陣が
どこにどのように資本を配分するのかなどを重視しています。
詳細を開示しない場合、投資家向けのプレゼンテーションや
業績発表で質問され、リターンがしっかりあると見込まれる分野に
適切な資本配分がされているか判断されることになります。

多くの経営陣が資本配分は社内の問題であると考えています。
しかし、投資家はセグメント情報を開示している企業の
資本配分がうまく行われているかどうかについて、収益、
営業利益、資産、減価償却などから推測します。
詳細を開示しない場合、推測だけで判断されてしまいます。
投資家に事実を正確に理解してもらうために、経営陣による
見解や分析を通じた情報を提供することが有効です。

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◆ 参考・出典一覧
『Investors Care about Strategic Resource Allocation』
IR Update (NIRI)  2020年冬号

「最善の利益規則」2020年6月末に施行

▼ 証券販売業者に求められる「平易な言葉でのわかりやすい開示」
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米国では、SECによる新規制である「最善の利益規則(Regulation
Best Interest)」が2020年の6月30日から施行されます。
それに伴い、今まで以上にプレイン・イングリッシュが
注目を集めています。

これまで米国の連邦法では、投資アドバイザーと証券販売業者には
異なる法規制が課されてきました。しかし、近年では、証券販売業者が
証券の推奨を行っており、顧客からみて投資アドバイザーの
投資アドバイスと区別することが難しくなっていることから、
顧客保護のために証券販売業者に対しても同じような法規制を
課すべきではないかという指摘がされていました。
このような背景の中、証券販売業者が個人の顧客に証券等を
推奨する際に、「顧客の最善の利益のために行動しなければいけない」
ことを定めた「最善の利益規則(Regulation Best Interest)」を
柱とする新規則案が生まれたのです。

この規則において果たすべきとされる義務は、開示、注意、
利益相反回避、法令遵守の4種類となります。
今回特に注目したいのが、開示義務です。ここでは、顧客との
関係の範囲と条件に関するすべての重要な事実や当該推奨に伴う
利益相反に関するすべての重要な事実を書面にて完全そして
公正に開示することが求められています。

▼ プレイン・イングリッシュを活用する
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情報の受け手にとっての最善の利益を追求するためには、
平易でわかりやすい表現を使ったコミュニケーションが
必要不可欠になります。そのために、今までに以上に注目を
浴びることが予想されるのがプレイン・イングリッシュです。

今回の新規制以外の分野においても、情報社会である今の
社会にとってスピードは重要な要素です。
プレイン・イングリッシュは、書き手が意図した内容を
明確に伝えることで、迅速に相手に理解を促すことができます。
その結果、書き手、読み手の双方に大きなメリットを生み、
効率的なコミュニケーションを図ることでコスト
効率も高まることが期待されます。

プレイン・イングリッシュの動きは英語に留まらず、
プレイン・ランゲージ(平易な言葉)として世界中に
広がりを見せています。あらゆる分野において今まで以上に
情報の明確かつ公正な開示が求められる中、
プレイン・ランゲージは企業にとって必要不可欠な
ツールとなってきています。

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◆ 参考・出典一覧
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20191210/02.pdf