経営者の顔が見える企業 

CEOとソーシャルメディア

効果的なIRウェブサイトを英語で作る際の最大のポイントは、企業が「匿名の存在」ではなくて「名前をもつ人間」の集まりであることを伝える点にあります。企業の中の人間が見える形でストーリーを伝えることで、対話の透明性が高まり、ステークホルダーと企業の間の信頼をはぐくみます。

ソーシャルメディア上で人間性を表現

顔が見える企業を実現するために、英語圏で大切にされているのが、CEOを中心とした経営陣のソーシャルメディアでの発信です。

Better Marketingの「How To Make Executives Look Interesting on Twitter」 におけるBecca Bicot氏の表現が非常に的を得ているので紹介します。

「CEOがソーシャルメディアで日々の出来事がツイートすると、消費者はCEOの人となりを知ることができます。CEOや社長は、企業の顔であると同時に、個人としての考え方や意見をもった1人の人間です。」

米国のCEOの発信

では米国企業のCEOがソーシャルメディアでそのような発信をしているのかをチェックしてみましょう。多くのCEOがツイッターを活用して、ステークホルダーとコミュニケーションをとっています。少し古い例ですが、大手企業のCEOのツイートを紹介します。

ジェフ・ワイナー氏(当時のLinkedInのCEO) 2017年9月28日
「One of the benefits of my getting older: Far greater appreciation for three things that are too often taken for granted: Health, love & time(年を重ねることの特典:人生で忘れがちな3つの大切なことへ感謝できる:健康、愛、時間)」

メアリー・バーラ(ゼネラルモーターズCEO)  2017年12月8日
「My message to women – go for it! Catch my conversation with @theskimm, where we discuss self-driving cars and #careeradvice(私から女性へのメッセージ:夢を実現させて!詳しくは@theskimmとの自動運転車と#キャリアアドバイスに関するインタビューで語っています。)」

ダニエル・エク(スポティファイCEO)2017年11月8日
「Sometimes you have to get knocked down lower than you have ever been, to stand back up taller than you ever were. You have to learn to fight for what YOU believe, not for what everyone else expects. #moodoftheday(時には今までにないくらい打ちのめされることだって必要だ。そうすることで今まで以上に力強く立ち直ることができる。自分が信じることに向かって突き進むんだ。誰かの期待なんて関係ない #今日の気分)」

企業の舵を取っているCEOが何を大切にしているかが見えてくるツイートを見ると、会社への興味が深まるのではないでしょうか。日本企業でも、ソーシャルメディアで発信するCEOは少数ながら存在しますが、英語での発信となると、ほとんど見られなくなります。まずは日本語から、企業の「中の人」が見える発信に注目すると面白いかもしれません。


参照:
https://cultbizztech.com/10-ceos-follow-twitter/
https://medium.com/better-marketing/how-to-make-executives-look-interesting-on-twitter-4ee5439d2c96

コロナ時代のCEO挨拶のベストプラクティス

UPS社新CEOの場合

米大手貨物運送会社UPSの新CEOとしてキャロル・トメ氏が今年の6月に就任しました。コロナウイルスの影響で世界中に不安が広がるなかでの就任です。トメ氏が就任にあたって発表した挨拶文を、新時代のCEO挨拶の優れた例として紹介させていただきます。英語挨拶文のリンクは、同社ホームページからご覧ください。
https://www.pressroom.ups.com/pressroom/ContentDetailsViewer.page?ConceptType=PressReleases&id=1591053205995-862

CEO挨拶の新しい課題

社会的な不安が高まっている世の中で、企業のCEOはそうした状況についての見解や考え方を表明することが求められています。優れた構成とシンプルな表現を使って伝わりやすく、読者の心に響く形でトメ氏はメッセージを伝えています。

感情に訴えかける構成

トメ氏自身の気持ちをシンプルながらも直接的な言葉で表現しており、社会に対する気持ちを企業のコアバリューとつなげています。流れを見ていきましょう。

・現在の環境(コロナパンデミック)における事業で大切にしていること、それに対する感謝

・現在社会が抱えている不安(ここでは多発しているアメリカの発砲事件)

・社会不安に対するトメ氏が感じている悲しみや怒り

・このような時期だからこそ大切にするべき、創業のコアバリューを紹介(社会の現状と企業のコアバリューを結び付ける)

・読者への協力の呼び掛け

この流れにより、現実を直視しながらも、前に進む姿勢がうまく表現されています。また、企業としての活動と個人としての感情を結びつけることで、読者に直接強く語りかけています。

プレイン・ランゲージ:アクション動詞を使った短くシンプルな表現

箇条書き、太字、シンプルな表現を活用し、受動態はあまり使用していません。シンプルでありながら、幼い表現でも拙い表現でもありません。ストレートで頭にイメージが浮かびやすい表現を使うことで、ここでも読者に直接語り掛ける効果を生んでいます。

世の中に不安が多く、だれもが先行きの不透明さを感じている時代、シンプルな言葉で読者に正直に語り掛けるスタイルを活用してみてください。

アニュアルレポート2020トレンド

持続可能性やCSRへの注目がさらに上昇
ここ数年、大企業の持続可能性への取り組みが注目されていますが、2019年には、持続可能性報告書やCSR報告書を発行したフォーチュン200社が90%近くになりました。前年の70%から大きく増加しており、持続可能性への注目がますます高まっています。

報告書の中で特によく使われている、気候変動対策の国際的なフレームワークはGRI (Global Reporting Initiative)とSDG(持続可能な開発目標)でした。

統合レポートを発行する企業数も増加
アニュアルレポートと持続可能性報告書を統合させた形式で、財務面での業績に加えて非財務情報(健康、安全、環境、コミュニティ)を提供する形式が統合レポートです。統合レポートを発行した企業の全体数は少ないものの、前年に比べると2倍になっています。フォーマットやプラットフォームに関しては各社が試行錯誤を重ねており、この試行錯誤の状況は今後数年続くと考えられています。

デジタルアニュアルレポートの傾向は?
アニュアルレポート専用のウェブサイトやマイクロサイトが注目されています。モバイルデバイスとの相性が良く、企業側が閲覧者の情報を取得できることが大きな魅力です。検索機能や、参照サイトへのリンク、エクセルでのダウンロードなど、投資家向けのツールも充実させることができます。

もうひとつ注目されているスタイルがインタラクティブPDFです。マイクロサイトよりも低予算で作ることができながらも、メニューからコンテンツにジャンプしたり、参照資料のリンクや動画などを埋め込むことが可能です。