コロナ時代のCEO挨拶のベストプラクティス

UPS社新CEOの場合

米大手貨物運送会社UPSの新CEOとしてキャロル・トメ氏が今年の6月に就任しました。コロナウイルスの影響で世界中に不安が広がるなかでの就任です。トメ氏が就任にあたって発表した挨拶文を、新時代のCEO挨拶の優れた例として紹介させていただきます。英語挨拶文のリンクは、同社ホームページからご覧ください。
https://www.pressroom.ups.com/pressroom/ContentDetailsViewer.page?ConceptType=PressReleases&id=1591053205995-862

CEO挨拶の新しい課題

社会的な不安が高まっている世の中で、企業のCEOはそうした状況についての見解や考え方を表明することが求められています。優れた構成とシンプルな表現を使って伝わりやすく、読者の心に響く形でトメ氏はメッセージを伝えています。

感情に訴えかける構成

トメ氏自身の気持ちをシンプルながらも直接的な言葉で表現しており、社会に対する気持ちを企業のコアバリューとつなげています。流れを見ていきましょう。

・現在の環境(コロナパンデミック)における事業で大切にしていること、それに対する感謝

・現在社会が抱えている不安(ここでは多発しているアメリカの発砲事件)

・社会不安に対するトメ氏が感じている悲しみや怒り

・このような時期だからこそ大切にするべき、創業のコアバリューを紹介(社会の現状と企業のコアバリューを結び付ける)

・読者への協力の呼び掛け

この流れにより、現実を直視しながらも、前に進む姿勢がうまく表現されています。また、企業としての活動と個人としての感情を結びつけることで、読者に直接強く語りかけています。

プレイン・ランゲージ:アクション動詞を使った短くシンプルな表現

箇条書き、太字、シンプルな表現を活用し、受動態はあまり使用していません。シンプルでありながら、幼い表現でも拙い表現でもありません。ストレートで頭にイメージが浮かびやすい表現を使うことで、ここでも読者に直接語り掛ける効果を生んでいます。

世の中に不安が多く、だれもが先行きの不透明さを感じている時代、シンプルな言葉で読者に正直に語り掛けるスタイルを活用してみてください。

アニュアルレポート2020トレンド

持続可能性やCSRへの注目がさらに上昇
ここ数年、大企業の持続可能性への取り組みが注目されていますが、2019年には、持続可能性報告書やCSR報告書を発行したフォーチュン200社が90%近くになりました。前年の70%から大きく増加しており、持続可能性への注目がますます高まっています。

報告書の中で特によく使われている、気候変動対策の国際的なフレームワークはGRI (Global Reporting Initiative)とSDG(持続可能な開発目標)でした。

統合レポートを発行する企業数も増加
アニュアルレポートと持続可能性報告書を統合させた形式で、財務面での業績に加えて非財務情報(健康、安全、環境、コミュニティ)を提供する形式が統合レポートです。統合レポートを発行した企業の全体数は少ないものの、前年に比べると2倍になっています。フォーマットやプラットフォームに関しては各社が試行錯誤を重ねており、この試行錯誤の状況は今後数年続くと考えられています。

デジタルアニュアルレポートの傾向は?
アニュアルレポート専用のウェブサイトやマイクロサイトが注目されています。モバイルデバイスとの相性が良く、企業側が閲覧者の情報を取得できることが大きな魅力です。検索機能や、参照サイトへのリンク、エクセルでのダウンロードなど、投資家向けのツールも充実させることができます。

もうひとつ注目されているスタイルがインタラクティブPDFです。マイクロサイトよりも低予算で作ることができながらも、メニューからコンテンツにジャンプしたり、参照資料のリンクや動画などを埋め込むことが可能です。

3年目の欧州MiFID II

▼ アンバンドリング規制のこれまでと今後の行方
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欧州の金融市場の標準化、投資家保護強化、市場の透明性向上を
目的としてMiFID II(第2次金融商品市場指令)が2018年1月に
導入されてから、2年が過ぎました。
その間にMiFID IIはIRにどのような変化を与えたのでしょうか。

MiFID IIによるIRへの影響で特に注目すべきなのは、
「アンバンドリング」と言われる規制です。

金融業界では、従来、運用会社からフルサービスの証券会社への
支払いには「バンドル型コミッション」という形態が
多く採用されてきました。バンドル型コミッションでは、
執行手数料に「リサーチ手数料」が加えられた
(つまりバンドルされた)形の料金形態となっています。

リサーチ手数料とは、証券会社(セルサイド)が行う調査レポートの提供、
企業との面会アレンジ(コーポレートアクセス)など、
証券の売買に関連するサービス(一般に「セルサイド・リサーチ」
と呼ばれるもの)に対する報酬です。

MiFID IIのアンバンドリング規制により、運用会社(バイサイド)は
リサーチを独立したサービスとして購入しなければならなくなったのですが、
実際は委託自体が減少するという傾向を生み出しています。
これに伴い、バイサイドに無料のレポートを提供する
「スポンサードリサーチ」を発行する会社も台頭してきています。

▼ 米国市場へも影響
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MiFID IIは欧州の規制ですので、欧州市場への直接的な影響は
もちろんのこと、金融市場のグローバル性により、
米国でも委託手数料収益が減少したり、投資銀行リサーチ部門への
プレッシャーが増加するなどの影響が出ています。

これは、運用会社、証券会社、株式発行企業の関係性に
大きな変化をもたらしました。
委託手数料収益の減少傾向は続いており、米国の機関投資家が
払ったコミッションは、2016年から2019年の間に半分まで
減少したという調査結果があります。
また、2019年までには、60パーセント近くの委託手数料が
アンバンドルであり、
リサーチの提供との組み合わせを購入したバイサイドは
半数にも及びませんでした。
また、運用会社は積極的に専用のコーポレートアクセススタッフを
採用するようになり、バイサイドと企業が直接コミュニケーションを
とる傾向も増加しています。

▼ 欧州の足並みそろわず、アンバンドリング緩和の動きか
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このアンバンドリングですが、全欧州が同じスタンスを
とっているわけではありません。
例えば、イギリスのFCAは、MiFID Ⅱがリサーチコストと
運用コストの両方のアカウンタビリティを向上させたとして
大きく評価しています。
しかし、フランスとドイツの規制当局は、委託件数全体が
減少していることに危機感を抱いており、
小規模なリサーチプロバイダーと運用会社の健全なビジネスを
守るためにアンバンドリング規制の見直しを求めています。

イギリス以外のEU諸国がアンバンドリングルールの緩和を
求める動きを見せているのと並行して、イギリスは
EUから離脱するプロセスを進めています。
イギリスがMiFID IIを維持するのか、それとも新しい規制を
作るのかが注目されています。
もし、イギリス、EU、米国が異なる制度を持つことになると、
機関投資家にとっては頭の痛い状況となるでしょう。

さまざまな変化が予測される中、IROがバイサイドと
セルサイドのモチベーションを理解し、コミュニケーションを
行うことが今まで以上に重要になってきています。

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◆ 参考・出典一覧
『MiFID II Turns Two: Second Thoughts and Unintended Consequences』
IR Update 2020年春号