投資家との信頼関係を築くための3つの秘訣

価値を創造するIR(インベスター・リレーションズ)の基本

目まぐるしい変化の時代、IRもまた複雑になり、IRご担当者に求められることも多くなる一方です。今回は基本に立ち返り、優れたIRを作り出す普遍的な要素を振り返っていきます。

時代やトレンドが変わっても、優れたIRには、以下の3つの要素が必ず含まれています。

1. 一貫性、明確性、包括性:IRのゴールデン三角形

  • 一貫したメッセージ:会社のミッション、ビジョン、戦略、目標を明確にするための核となるストーリーが重要です。プレスリリース、プレゼンテーション、経営陣インタビューなど、すべてのコミュニケーションチャネルで、一貫したメッセージを伝えます。
  • 明確なコミュニケーション:専門用語や専門的すぎる表現は避け、すべての投資家が理解しやすいプレインランゲージで説明します。また、図表などのビジュアルも活用します。
  • 包括性:自社にとっての課題や潜在的リスクを公表し、克服するための戦略も強調することで、バランスの取れた視点を提供します。

2. 人間関係の構築

単に情報を発信するだけでなく、投資家と長期的な関係を築くことが重要です。具体的には、以下のことを意味します。

  • 積極的な関与:決算期だけでなく、定期的に投資家とコンタクトをとりましょう。投資家向けのカンファレンスの開催、業界イベントへの参加、オープンな対話を促進するための個別ミーティングも必要です。
  • 投資家のニーズを理解する:投資スタイルやリスク許容度に応じ、投資家層ごとにコミュニケーションを調整します。
  • フィードバックを活用:投資家からのフィードバックを活用して、コミュニケーション戦略を改善していきます。

3.  透明性の確保

信頼を構築するためには、透明性が大切になります。

  • タイムリーな情報開示:決算や重要ニュースは迅速かつ正確に開示します。
  • オープンなコミュニケーション:会社の業績、課題、機会について正直であることが大切です。
  • コミュニケーション窓口:投資家からの問い合わせに対応するシステムを確立するなど、投資家の質問にすぐに答えられるようにします。

以上、規制や環境が変わり続ける世の中で、基本に立ち返り、足元を見失わないためのヒントとなれば幸いです。

ジェネレーションギャップを放置しない ダイバーシティ&インクルージョンに関する新しい注目ポイント

企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの重要性が指摘されている昨今、特に注目されているのが世代の違いに関係するインクルージョンです。

寿命と定年の年齢が延びている現在、5世代が労働力として活躍しています。

  1. サイレント・ジェネレーション:1922~1945年生まれ
  2. ベイビー・ブーマー:1946~1964年生まれ
  3. ジェネレーションX:1965~1980年生まれ
  4. ジェネレーション Y(ミレニアル世代):1980~1996年生まれ
  5. ジェネレーションZ:1997~2012年生まれ

離職理由の一つが「有毒な企業文化」

各世代の仕事への姿勢は大きく異なっています。姿勢の違う5世代をまとめ、育て、能力を発揮できるようにすることが企業に求められています。

新型コロナウイルスのパンデミック後の大量離職によって、企業はこの課題に対応する大切さを身に染みて感じています。退職や休職、キャリアの再考などの理由のトップ2は「燃え尽き症候群」と「有毒な企業文化」です。特にミレニアル世代にこの傾向が強くなっています。

5世代すべてが活躍できる環境の作り方

離職の原因となる企業文化を解決しようとしても、異なる考え方が混在しているため、一つの解決策で全世代の問題を解決することはできません。

従来のダイバーシティ&インクルージョンの課題と同じように、異なる世代の従業員に対する無意識の偏見を取り除くためのトレーニングが必要不可欠です。また、世代間の意識が異なることを認識してもらうと同時に、従業員がお互いを一人の人間としてみることも必要です。先入観を持つことなく接し、自分の考え方を押し付けるのではなく、個人としてコミュニケーションをとる必要があります。

個々の従業員の特徴を大切にすることで、現場レベルから健全な社内文化を築くことができ、従業員と雇用主、そして従業員間の分裂を和らげることができます。

企業がビットコインを所有する時代は近い!?

投資家の反感を受けても伸び続けるビットコイン

2018年ごろ、米国の著名な投資家の多くが、ビットコインの存在に強く反発していました。伝説的な投資家ウォーレン・バフェット氏はビットコインを「殺鼠剤の2乗のようなもの」と表現し、JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモン氏は、ビットコインは詐欺であり、取引した従業員は愚かであり解雇に値するとしていました。

それから3年が過ぎ、ビットコインを取り巻く環境は変わってきています。

ビットコインへの投資が活用される時代が始まっている?

現在、JPモルガンは、ビットコイン関連の事業を行う企業に対して銀行サービスを提供しています。ハーバード大学やプリンストン大学などは、大学の基金の一部としてビットコインを運用しています。また、資産価値を保有するために金が活用されていますが、ビットコインの方が有効だと考える人もでてきています。

会計処理とボラティリティが課題

ビットコインを所有する企業のニュースも耳にするようになりましたが、米国企業の多くはビットコインを保有していません。その大きな理由に、会計処理上の規制と、財務の安定性への影響があります。

多くの国で、ビットコインは無形資産として扱われます。そのため、購入価格が貸借対照表に計上された後、資産の評価額の減少のみが記録されます(のれんの減損の場合と同様)。売却するまで、評価額の上昇を反映できないため、マイナスの影響の方が大きくなるのです。

また、企業の財務部門は、貸借対照表の安全性と流動性を保証する役割を担っています。それに対し、ビットコインは価格が大きく上下する特徴があるため、安定性や流動性を確保できません。

ビットコインのボラティリティが少なくなり、会計基準が変更されるまでは、ほとんどの企業にとって、ビットコインを保有することは現実的ではないでしょう。