デジタイゼーションが変えるビジネス 新時代の価値創出

新型コロナウイルスのパンデミックによりビジネスプロセスのデジタル化が加速しています。デジタイゼーションを成功させるためには、企業はプロセスを変えるだけでなく、考え方を変えることが求められています。

エコシステム全体を考慮する視点

従来の「バリュークリエーション(価値創造)」では、自社のみが生み出す価値について語られることが一般的でした。しかしデジタイゼーションを実現するためには、外部パートナーのプラットフォームやノウハウを活用する必要があります。そのため、自社の利益を追い求めるだけでなく、自社を取り巻くエコシステム全体の利益を考えることが求められています。

1社だけで作り出す価値を過度に重視するのではなく、外部のリソースを集結させて価値を生み出すという考え方です。

消費するのではなく価値を提供する

この新しいトレンドの中で外部とのパートナーシップを確立するためには、消費するリソース以上の価値をパートナー企業に提供することにあります。搾取してしまうと、パートナー企業は離れていき、エコシステムが衰弱していきます。パートナー企業から受ける恩恵以上の価値を提供することが、自社のエコシステムの繁栄につながるのです。

パートナー企業の価値創出をサポートする

従来の物づくりの焦点は製品でした。その上で、製品レベルで利益を生み出すために、コストよりも高い売価を設定することで利益を得ていました。そこから発展し、製品を通じて生み出す価値が重視されるようになりました。デジタイゼーションが進むに伴い、「どのように価値を生み出すのか」からさらに発展し、「エコシステムの一員であるパートナー企業が価値を生み出すためのサポート」を提供して価値を創出するという考え方が主流になってきています。

決算発表のバズワード「サプライチェーン」 的確なコミュニケーションで投資家の信頼を勝ちとる

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、サプライチェーンの混乱が世界的な課題となっています。決算やニュースリリースにおいて、サプライチェーンという言葉を今まで以上に耳にするようになったのではないでしょうか。

Bloombergによると、10月5日の時点で、2021年の決算説明会で3,000回サプライチェーンという言葉が使われました。ちなみに、2020年は通年で2,000回使われたということです。サプライチェーンについて説明される場は、確実に増えています。

投資家が関心をもつ課題ながらも北米での優先順位は低め

サプライチェーン問題はステークホルダー関連の課題に位置付けられています。ステークホルダー関連の課題には、カーボンニュートラルやカスタマーリレーションなども含まれます。

IR Magazineの10月19日の記事によると、ステークホルダー関連の課題の中では、サプライチェーン問題の優先度は企業にとってそこまで高くありません。一方で、投資家が高い関心を寄せている分野でもあります。ただし、北米に限定すると、企業は積極的にサプライチェーン関連の課題を投資家に説明していますが、投資家にとっての優先度は低くなっています。

課題を戦略的に説明する

いずれの場合も、サプライチェーン問題への過剰なフォーカスに、投資家は懸念を感じています。サプライチェーン問題を体のいい隠れ蓑に使って、業績低迷の理由をしっかり説明しないことを危惧しているのです。

そのため、サプライチェーン関連の課題を投資家に説明する際には、的確かつ十分に、さらには戦略的な視点で説明する必要があります。

企業の歴史、現在置かれている状況、持続可能な長期的価値を実現させる戦略などとの関係を明らかにして、的確かつ簡潔に説明することが投資家からの信頼を得るコミュニケーションのポイントとなります。

アメリカ式、IR情報の掲載方法
関連情報を絡めたカレンダー型方式が主流

日本企業のウェブサイトのIR情報には、決算短信、投資家との電話会議、よくある質問などが主に掲載されています。アメリカの企業ではどのような資料を発表しているのでしょうか。

近年、多くの米国企業がカレンダー型方式を活用してIR情報を掲載しています。この方式では、IR情報のセクションの下の「イベント」または「イベントおよびプレゼンテーション」というヘッダの下にさまざまなイベントが時系列に沿ってシンプルなスタイルで掲載されています。クリックすると関連情報へのリンクがシンプルに並べられています。投資家は過去、現在、未来の業績を簡単に見つけることができます。

またカレンダー型方式では、文書、動画、音声、静止画などさまざまなIR情報を紐づけて情報提示することができます。該当情報がPDFである場合は、その旨を明示するなど、読み手の利便性についてよく考えられています。

具体的に、世界トップのエンターテイメント企業ディズニー社と小売業ウォルマート社の例を見ていきましょう。

ディズニー社の決算報告ウェブキャスト

ディズニー社は、IRページの「イベントとプレゼンテーション」のヘッダ下にカレンダー型方式でIR情報を掲載しています。

今後発表予定の四半期業績についての予告、過去のリリース、インベスターデータなどが時系列順に並べられています。

例えば、2020年第4四半期の業績は、Investor Relations – EVENTS AND PRESENTATIONS下の「Disney’s Fiscal Full Year and Q4 2020 Earnings Results Webcast」(ディズニー社2020年度および第4四半期決算報告ウェブキャスト)のコラムをクリックすると、すぐに音声が再生できるようになっています。また、同じページに、関連情報である

・決算短信
・決算調整(非GAAPからGAAPへ)
・音声(MP3 ファイル)
・音声のトランスクリプト

などが同じセクションからダウンロードできるようになっています。

https://thewaltdisneycompany.com/investor-relations/#events
https://thewaltdisneycompany.com/disneys-fiscal-full-year-and-q4-2020-earnings-results-webcast/

ウォルマート社

ウォルマート社も、「イベント」ヘッダの下で同様にカレンダー方式をつかってイベントを掲載しています。また、5四半期先までのリリースの予告も掲載しています。

各イベント項目には、情報が公開される日付と時間が掲載されており、カレンダーアプリへの入力もクリックひとつでできるようになっています。また、「四半期報告の資料は、発表日の午前6時に閲覧できるようになります」といった、簡単なメッセージなどが記載されています。

https://corporate.walmart.com/newsroom/financial-events