ESG投資における効果的なコミュニケーション原則
プレインランゲージでグリーンウォッシュを避ける

ESG投資は広く普及し、企業のESGに対する意識も消費者からの期待も高まっています。しかし、注目が集まるにつれて、ESGにまつわる誤解や透明性に対する懸念も増えています。

今年9月、米国証券取引委員会(SEC)がESGをテーマにした投資ファンドに対し、表記しているテーマに従って実際に投資することを定める規則を発表しました。これは主にファンドを対象としたものでしたが、企業としても「言っていること」と「実際の行動」が一致していない状況や、実践そのものが環境に対してプラスの影響をもたらしていないという批判、いわゆる「グリーンウォッシュ」への社会からの厳しい視点に備える必要があります。

効果的なESGコミュニケーションの原則

ESGに関する主張に透明性と裏付けを、簡潔でわかりやすく提供することが、自社の信頼の維持につながります。そのための秘訣をいくつかご紹介します。

  • 専門用語やテクニカルな用語の使用は避け、広く理解される表現を心がけましょう。
  • 曖昧な表現や誤解を招く表現を避け、明確で一貫性のある表現を使用します。これにより、情報へのアクセスが容易になります。
  • 誇張せず、事実に基づいた情報提供を心がけます。信頼性を損なうことなく、正確な情報を伝えます。
  • ESGに関する主張は具体的なデータや事例、認証、第三者の推薦などで主張を裏付けます。
  • ESG要素とその経営判断への影響を明確に説明します。これによりステークホルダーは企業の方針を理解しやすくなります。
  • ESGに関する取り組みがもたらした成果を、事前に定めた評価基準に基づいて具体的に説明します。これにより、企業の取り組みが抽象的でなく具体的であることが伝わります。
  • ESGイニシアティブに伴う課題や限界を率直に認識し、非現実的な約束や保証を避けます。真摯な姿勢がステークホルダーに対して信頼を構築します。
  • 原材料の調達や製造工程、サプライチェーンに関連する環境影響をオープンにし、ステークホルダーに情報を提供します。

わかりやすく、オープンで、伝わる情報提供を行うことで、ステークホルダーとの信頼関係を深めることができ、不要にグリーンウォッシュの疑いを掛けられる可能性を減らすことができます。また、わかりやすく、伝わる情報提供には、プレインランゲージが重要な役割を果たします。

翻訳時に注意すべきアメリカ英語とイギリス英語の違い

弊社が推奨しているプレインイングリッシュの9つの原則の中に「対象読者を明確にする」という原則があります。日本語から英語に翻訳する際にも、対象となる読者や地域がアメリカ英語なのかイギリス英語なのかしっかりと確認する必要があります。今回は、両者の違いを翻訳時に注意すべきポイントに絞って見直してみましょう。日本ではアメリカ英語を学習している人が多いため、イギリス英語は少し聞き馴染みのない表現もあるかもしれません。

1.単語
同じ意味でもアメリカ英語とイギリス英語では用いる単語が異なります。

日本語 アメリカ英語 イギリス英語
サッカー soccer football
映画 movie film
fall autumn

2.つづり
つづりによる違いも見られます。

日本語 アメリカ英語 イギリス英語
color colour
中央 center centre
~を組織する organize organise

3.前置詞
前置詞の使い方や、前置詞そのもののつづりが異なるものがあります。

日本語 アメリカ英語 イギリス英語
週末に on the weekend at the weekend
~のあちこちに around round

4.ライティングルール
・日付の表記 以前の記事でもご紹介したとおり、アメリカ式とイギリス式では日付の表記が異なります。
・組版 アメリカ英語はシカゴルールに、イギリス英語はオックスフォードルールに従うのが一般的です。
シカゴルールについてはオンライン版があるので、ご興味がある方はぜひご覧ください。

いかがでしたでしょうか。同じ英語でも様々な部分で異なる言語であることがご理解いただけたと思います。両者の違いを改めて認識し、翻訳する際にもターゲットとなる地域にあわせた英語表記にすることが大切です。