ESG開示:情報量の多さが株価に悪影響?!

格付け機関の間での評価のばらつきが課題

ESG開示では、「多くの情報を開示することが良い」とされてきました。より多くの情報を提供することで、企業のESG活動に関する理解が深まり、株価も安定するという考え方です。

しかし、新しい調査で、開示情報の多さが逆効果になることがわかりました。情報量が多いほど、複数の格付け機関の間での意見の食い違いが大きくなり、株価の変動が予測不能になってしまうのです。

評価の不一致を起こす3つの原因

このような現象が起きる原因は以下のように3つあります。

・ESG投資が比較的新しいものであること。この現象は、取引所でESG開示要件が導入された直後に特に目立っています。

・投資資産として注目度が高い、成長過程の分野であること。

・格付け機関の評価に、主観や不確実性、予測が含まれること。これは、ESGが行動と結果の時間差が大きい分野であり、現在行われている取り組みの結果が出るのは、数年あるいは何十年も先となることに原因があります。

つまり、関心の高さ、不確実さ、新しい取り組みという3つの要素が組み合わさり、格付け機関による評価の不一致と不安定な株価が起きていると考えられます。

評価基準が確立されるまでに企業にできること

このような状況を解決するべく、評価基準の確立に向けた動きが活発になっています。共通の基準が確立されると、格付け機関の間での評価差が縮まり、株価への悪影響も減少します。

全体的な傾向として、格付け機関は能動的な活動を評価しています。そのため、能動的に取り組んでいる活動内容を開示することが求められています。ポリシーなど行動を伴わない情報の開示は、評価が分かれやすくなってしまいます。

また、読み手に誤解を与えないプレイン・イングリッシュで、より質の高い情報を提供することも重要な役割を果たしていきます。